
小田原城址公園(小田原市城内)の「こども遊園地」に設置され、現在休止中の回転遊具「メリー・カップ」が、老朽化により本年度中に撤去されることになった。およそ半世紀にわたって親子連れらに親しまれてきたが、国指定史跡「小田原城跡」内にあるために大規模改修が難しく、市は「苦渋の選択」として撤去を決めた。利用者からは引退を惜しむ声が寄せられている。
遊園地を管理する市は、4日に開会する市議会9月定例会に、廃止のために必要な条例の一部改正案などを提出する。
小田原城総合管理事務所によると、メリー・カップは1970年にお目見えした。直径8・4メートルの円形の敷地内にカップが9基備えられ、利用者はカップ内に座り、中の円盤を回して回転速度を上げて楽しむ。
料金は1回80円。「30年以上変わっていない」(同事務所)という安価も人気で、大型連休には家族連れらが列をなすなど、長年愛されてきた。
だが、昨年9月の定期点検で故障が発見され、市は利用を休止。その後の精密検査では、鉄骨部の主要部分に激しい腐食による割れや貫通が複数見つかった。
業者などから「遊具全体の更新が必要」との意見もあり、文化財保護法を所管する文化庁に照会。「長期利用を想定した大規模改修は望ましくない」との回答を受け、同事務所は「『撤去もやむなし』と判断した」と説明している。
湯河原町に住む女性(53)は、親子3代にわたって遊園地に親しんできた。メリー・カップは、今は2児の母親になった長女(32)と一緒に乗って楽しんだという。それだけに「こういう遊具が一つでも多くあれば、遊びながら(小田原城などの)歴史的なものにも触れさせることができるのに」と思い出の遊具の引退を残念がった。
今後について、同事務所は「新たな遊具を設置するのは難しい」とし、「子どもからお年寄りまでが利用できる憩いの場を整備したい」としている。