近くて遠い異国・米国の友人から久しぶりにメールが入りました。ミスター・ディビット・コンディーノ。イタリア系米国人です。もともとウチのお客さまですが、今では日本に来れば一緒に飲みに行く友人です。環境調査船の一等航海士をしていて、世界の海を股(また)にかける現代のシンドバッドなんです。
メールには、船乗りは陸に上がると海にいるより忙しいぜと、グチのような自慢のようなことが書いてありました。陸に上がれば、待ち焦がれた奥方が待ってましたとばかりに、「ハニー! アレしてコレして」「ハニー! 今日は旅行に連れてって」と、毎日金髪の奥さんとのお約束でスケジュールがいっぱいなんだってさ。これは「ハニーデュー(蜜)リスト=二人の甘いお約束表」と呼ばれ、怖いもの知らずの船乗りでさえ震え上がるシロモノだそうです。いつまでも恋人同士みたいでうらやましいですよね。
遠い異国の友人からメールが来るなんてロマンチックでしょ? 私の父も仕事の関係でよく外国のお客さまをウチに連れてきました。でも初めての時は本当にビックリしました。中学一年の時でした。突然、父が身長二㍍以上ある異人さんを連れてきました。
僕はしばらくタンスの陰に隠れていましたが、父に無理やり引っ張り出されてしまいました。英語の教科書を握りしめ、「ハロー、ワタシはシゲオです」「おゲンキですか? ワタシはゲンキです。サヨウナラ」。異人さん「△×○△…(沈黙)」、僕「…(失神)」。こんな感じでした。
彼はお風呂のお湯を泡でいっぱいにして体を洗い、栓を抜き、布団を二枚ずつ(計四枚)縦に並べて、睡眠をとりました。この日は誰も風呂に入れず、一枚の布団で家族一緒に寝たのです。この出来事をわが家では今でも「ペリー来航」と呼び、開港記念日にはお風呂に入りません。
翌日、駅で電車を待っていると、ペリーが向こうから歩いてきて、僕の前で止まりました。そして一言「カワサキ?」、僕「このサキ!」。初めて、ペリーとの会話が成立した感動の瞬間でした。この英単語がまるで出てこない英会話(?)が自信になり、対外国人恐怖症を克服できたのでした。
最近テレビを見ていて、日本人って外国人に甘いよなと思うことが多くなりました。そこで、皆さん! 異人さんになめられちゃダメだぞー。せめてイーブンでいきましょう。
(2004.11.7)