築50年前後を経た食品包材会社「ヨネヤマ」の旧本社(川崎市川崎区日進町)がリノベーション(大規模改修)され、8月1日に複合ビルとしてグランドオープンする。木材加工の工房やカフェ、オフィスなどを備え、クリエーターや起業家が集う創造拠点を目指す。老朽化した簡易宿泊所が立ち並ぶ日進町地区の活性化に向けた起爆剤としても期待されている。
複合ビルの名称は、イタリア語で唯一無二を意味する「unico(ウニコ)」。JR川崎駅東口から徒歩10分の場所にあり、現在は同区大川町に本社を置くヨネヤマが1989年まで本社や従業員寮、工場として使った建物3棟から成る。
5階建てのA棟と4階建てのB棟、昨年6月に先行オープンしたバスケットボールコート施設で構成。地元になじんできた建物外観は残しつつ耐震補強し、内部は木をふんだんに使って温かみと新しさを出した。
A棟(延べ床面積約1760平方メートル)は1階に3次元(3D)の最新木工加工マシンを備え、木育事業も手掛ける工房「VUILD(ビルド)」や、バーカウンターのあるカフェ、地ビール醸造所が入居。2階は卓球と飲食が楽しめるダイニングバーが入った。
3、4階はオフィススペースで、ステンドグラス工房や皮革品工房、フォトスタジオなどクリエーターの人たちの拠点となる。5階は広さ約200平方メートルのイベントスペース、B棟(同約700平方メートル)の3、4階はシェアハウスとして貸し出す。
近隣は簡易宿泊所が立ち並ぶエリア。高度成長期は労働者の街として活況を呈したが、近年は宿泊利用者の高齢化、建物の老朽化が進む。unicoオーナーの武井雅子さん(51)は「人が集まり、交流が生まれ、新しいものが生まれれば。人と人との関係が地域に広がっていくようになればいいと思う」と話す。
ヨネヤマ創業者の故米山市郎氏は、川崎大師薪能の創設などの文化振興や社会奉仕に尽くした人物。孫の雅子さんは「社員を家族同様に大切にし、夢を忘れない人で、この社屋はその思いが詰まっている。人の笑顔が生まれるような場所にしていきたい」と意気込んでいる。