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避難生徒、夢つかめ 支援8年「とどろき学習室」

話題 | 神奈川新聞 | 2019年5月2日(木) 12:48

4人の中高生が参加し開かれたとどろき学習室 =川崎市中原区

 東日本大震災後、川崎市で避難生活を送る中高生向けに始めた学習支援プロジェクト「とどろき学習室」が、4月末で開始から丸8年を迎えた。近年は熊本地震や西日本豪雨での避難者にも対象を拡大。プロジェクトに携わる都留文科大准教授の鈴木健大さん(49)は「災害で将来の夢を諦めてほしくない」と今後の活動へ意欲を見せる。

 同学習室は震災の翌月、被災者の一時避難場所となった川崎市とどろきアリーナ(同市中原区)で産声を上げた。発起人となったのは当時市職員だった鈴木さん。同アリーナでボランティアとして支援物資の仕分け作業に従事し、良好とは言い難い避難所の学習環境を目の当たりにしてきた。

 翌年5月には、県内のより広い地域から通学できるようにと、横浜市西区に「よこはま学習室」を追加で開設した。現在は川崎で週1回、横浜で週2回の学習室を開き、計約25人の中高生が参加。ボランティアの大学生から宿題や受験勉強の手ほどきを受けている。東京電力福島第1原発事故のあった福島県からの避難者が一番多いという。

 この8年間で100人を超える中高生が学習室に通い、その多くが大学進学を果たした。学習室で学んだ高校生が大学進学後、教える側に回るなど取り組みは確実に定着しつつある。

 家族と共に福島県から避難してきた高校2年生の男子生徒は、とどろき学習室を4年ほど利用。「高校受験の時には、複数の解き方を教えてもらえて助かった」と振り返る。同学習室でリーダーを務める中山香月さん(22)=横浜市港北区=は「学習室で学んだ生徒が、大学に入学した時が教える側には一番うれしい瞬間」と笑顔で語る。

 一方、年月の経過に伴って新たな課題も浮上してきた。以前は避難者の多くが公営住宅に入居。行政の窓口経由で会のチラシを配布して学習室の周知を図ってきた。しかし、現在は公営住宅を退去し、親戚宅などに身を寄せる中高生が増加。もともと行政が把握していない場所で避難生活を送る人も少なくなく、そうした生徒らにどう情報を届けるのか、対策が求められている。風化により、教える側の大学生ボランティアも減少傾向にあるという。

 「本当は勉強したいのに、学習室の存在を知らない生徒がいるとしたら残念」と鈴木さん。課題はあるものの、「避難者の生活はいまだに再建できていないケースも多い。ニーズがある限りは続けていきたい」と力強く語った。

 
 

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