横須賀市の市民団体が、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密の没後100周年を記念し、冊子を発行した。横須賀西海岸の芦名で暮らした晩年の走り書きなどの新資料も収録した。
西海岸の自然や歴史、文化を次世代に継承しようと活動する「おおくすエコミュージアムの会」が、2017年発刊の「前島密と横須賀」に次ぐ第2弾として、全12ページの「前島密と横須賀西海岸」を発行。会の顧問を務める民俗学研究家の辻井善彌さん(87)=同市芦名=が執筆した。
冊子は「密の最晩年の断簡」「なぜ芦名に如々山荘を…」「前島密夫妻の墓塔について」など全5章で構成され、前島の人物像に多角的に迫っている。
また辻井家に代々保管されてきた資料も公表。例えば、たばこの不良品について専売局に忠告する下書きらしきものもある。1904(明治37)年に煙草(たばこ)専売法が公布され、販売が始まったが、不良品に出くわし、愛煙家の不信を招くことを心配する内容が書かれている。
辻井さんは「密は大阪遷都を建言しようとした大久保利通に江戸遷都論を主張したことでも知られる。最晩年に至るまで、国や社会のために自らの意見を進言する姿勢は変わらなかったのだろう」とみる。
冊子は1万部発行。前島の墓がある浄楽寺(芦名2丁目)に置かれているほか、27日に同寺で執り行われる墓前祭の参列者らにも配られる。
前島は明治政府の官吏として切手発行やポスト設置など、近代的な郵便制度を築いた。