パリを拠点に活躍した銅版画家、長谷川潔(1891~1980年)の初期から晩年までの主な代表作を網羅した回顧展が、町田市立国際版画美術館(同市原町田)で開催中だ。モチーフに寓意(ぐうい)性を込めた静物画には、豊かな精神性が漂う。
長谷川は、現在の横浜市西区御所山に生まれた。西洋に憧れ、1918年に渡航し、戦争中も帰国せずに生涯をパリで過ごした。
見どころは50年代から60年代に手掛けた「マニエル・ノワール」の作品だ。フランス語で「黒の技法」を意味し、漆黒の背景にモチーフが白く浮かび上がる。子どもの頃、墨地に文字が白く写し取られる拓本を手本に、書道を学んだ影響があるという。