高崎に出張する機会があった。筆者は相模原に住んでいる。新幹線で行くか、それとも八高線で行くか。普通の大人なら迷わないだろう。考えあぐねて、往路は時間的制約もあるので新幹線、復路はのんびり八高線、と決めた。
JR相模原駅からの比較(高崎に正午着を想定)。最速は新横浜に出て新幹線2本の乗り継ぎ。所要1時間49分、距離158キロ、乗り換え2回、料金5920円。八王子に出て八高線なら所要2時間57分、距離108キロ、乗り換え2回、料金1944円―。時間はかかるが、地域によっては後者も遜色ない気がする。
さて帰途。高崎13時34分発高麗川行き。八高線の魅力は八高北線ともいうべき、この非電化区間だろう。気動車の走る線区は首都圏ではもはや貴重ではないか。発着番線もホーム先端の、わびしい切り欠き式。やがてキハ110系3両編成が入ってきた。
関東平野の西端の山裾を丹念にたどる。そこには荒川の本・支流が大小の扇状地を広げており、列車は小高い分水嶺をだらだら上り下りしながら、それぞれの水系の集落を訪ねゆく。勾配は最大20パーミル。寄居や小川町、越生では私鉄との出合いが楽しい。
無人駅もいくつか。静かな山里の風景、眠くもなる。向かいにおばあさん2人。「高崎しか行くところないから」「目の保養だよ」。はずむ話は何だろう。15時07分高麗川着。ここから先は電車による。往路も八高線でよかったかな、と思う。(F)