65歳以上の5人に1人が発症するとされる認知症への理解を深めてもらおうと、小田原市は2018年度から小中学生を対象にした「サポーター養成講座」を開いている。介護事業所の職員らが寸劇を交えながら症状や対応の仕方を分かりやすく説明する様子に、児童たちは「優しい言葉を掛けて支えてあげたい」と思いを新たにしている。
「声掛け支えてあげたい」
「認知症は、忘れるのではなく、記憶をしまうことができなくなるんだよ」
今月15日に市立下府中小学校(同市酒匂)で開かれた講座では、4年生約60人を前に、講師の川上聖嗣さんがプロジェクターを使いながら優しく語り掛けた。川上さんはグループホーム「ローズハウス」(同市寿町4丁目)の施設長だ。「これからの社会を考えるとともに、街中で気軽に声を掛けるきっかけになってほしい」と願っている。
寸劇を演じるのは、市の「キャラバン・メイト」のメンバーたち。認知症患者向けのグループホームなど市内の施設で介護職員として働く一方、劇団「言忍(ことにん)」(10人)に所属している。この日は夜勤明けで駆け付けたメンバーもいた。
劇中では、食事をしたことを忘れたり、コンビニのレジで小銭を出すのに手間取ったりと、認知症患者が陥りやすい状況を再現した上で、その場に遭遇した場合にどうしたら良いかを児童と一緒に考えた。困難に直面した場面に戻り、児童が劇に加わったり、児童の提案を反映させたりする演出で、理解しやすい内容に仕上げた。
お年寄りの手助け役として寸劇に飛び入り参加した同校4年の男子児童(10)は「怒ることはせず、助けてあげたい」と力強く宣言。女子児童(10)は「優しく言葉を掛けて支えてあげたい」と理解を示す言葉が相次いだ。
講座は昨年10月に国府津小4年、今年1月には下曽我小3~6年、3月初旬には鴨宮中3年生を対象にそれぞれ開催。市高齢介護課の担当者は、取り組みについて「身近な人が認知症になることも考えられる。小中学生が正しい接し方を学び、地域の高齢者と交流することで、思いやりや助け合いの心を育むことにつながる」と話している。
相談窓口は各地域包括支援センター。問い合わせは、同課電話0465(33)1864。