9日からシネスイッチ銀座で上映中。どんな苦境に立たされても、勇気を持ち続けることを諦めなかった女性の話だ。舞台は、1950年代の英国。海辺の小さな町に、戦争で夫を亡くしたグリーン(エミリー・モーティマー)=写真=が訪れ、物語が始まる。
彼女の目的は、町に書店を開くこと。だが、町の権力者・ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)はそのことが気に入らない。夫人はグリーンが書店を開くために購入した古い家を、以前から芸術センターにしたいと思惑を練っていた-。
大邸宅に住み、豪華な衣装に身を包む夫人。政治家や有力者との強力なコネを利用し、書店を閉店させようと画策する。作品中、まるで夫人がおとぎ話の魔女のような存在に見えてくる。
魔女からプリンセスを助けようと初老の資産家・ブランディッシュ(ビル・ナイ)が王子のように現れ、好意を寄せるグリーンに救いの手を差し伸べるが、志半ばに倒れてしまう。頼るべき人がいないグリーンは、どう窮地を脱するのか。夫人の抑圧は強く、簡単にハッピーエンドにはいかないさまが描かれる。そして、グリーンはどんな時も勇気を忘れない。
海辺の風景はとても美しく、その映像には息をのむ。センチメンタルになり過ぎず、美しい映像ながらも派手さを抑えた演出と脚本が素晴らしい。