多くの市民が犠牲となり、10万人以上が被災した1945年4月15日の川崎大空襲の日に合わせ、戦争の悲惨さや平和の尊さを語り継ぐ「川崎大空襲記録展」が9日、川崎市平和館(同市中原区)で始まった。初日は、大空襲や学童疎開でつらい生活を体験した中西京子さん(86)=同市幸区=と岡道子さん(83)=同市宮前区=姉妹が「平和という幸せを若い人に伝えていきたい」「戦争はいけないことと学んでほしい」と約70人を前に呼び掛けた。
現在の川崎区で小学6年生と3年生だった44年8月、大山(伊勢原市)の宿坊に学童疎開した体験を、京子さんは絵本「まっしろいおにぎり」など2作品にまとめている。
昨年復刻したそれらの作品がスクリーンを使って披露された後、京子さんは「お昼が終わるとまきを拾いに山に入ったが、けがをしても薬もなく、そのままうんで、かさぶたが靴下に付いた。体中シラミだらけだった」と振り返った。道子さんも「食事は一口30回以上かめば、おなかがいっぱいになると言われた。でも10回もかむとなくなってしまう。だからおなかがいっぱいになることはなかった」と説明した。
疎開後に自宅に戻り、川崎大空襲を体験した京子さんは、「畑のあぜ道に伏せながら自分の家が燃えていくのをじっと見ていた」と当時の状況を語った。
この日は、川崎大空襲の体験談を基に作った紙芝居の上演、市立東橘中学校(高津区)と神奈川学園中学校(横浜市神奈川区)の生徒による平和学習の発表も行われ、参加者はあらためて平和への思いを確認し合った。
同記録展は、焼け跡など当時の写真やパネル、千人針、戦死者への手紙など約124点を展示。5月6日までで、入場無料。午前9時~午後5時(月曜と第3火曜休館)。