戦前に朝鮮半島で活躍した画家・三木弘(ひろむ)(1900~82)を特集した所蔵品展が4月14日まで、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開かれている。自宅の火事で多くの作品が焼失した三木の、晩年の作品を中心に約20点を紹介。美術館の担当者は「個展などの活動が多くなく、(その画業は)あまり知られていないが、三木の再評価につながれば」と期待している。
同美術館によると、三木は和歌山県に生まれ、06年に家族と共に朝鮮半島に移住。18、19年ごろに独学で絵画を始め、東京やパリでも画力を磨いた。24年に朝鮮美術展覧会で三等賞になり、その後も20年にわたってほぼ毎回出品。戦後は京都に引き揚げて活動していたが、67年に自宅が火災に遭い、それまでの作品がほとんど焼失したという。
「知られざる詩情の画家 三木弘」と題した収蔵品展は、主に60年代後半以降に制作され、横須賀市内に住む遺族らが所蔵する作品を取り上げた。現存する作品はデフォルメされた形状や柔らかい色合いで表現しているのが特徴で、黒やグレーなどの色彩でニワトリを描いた5点や、恋文を書く古代の女性のようにも見える抽象的な作品などが会場に並ぶ。担当者は「動物など身近なものはユーモラスに、風景は無国籍に描かれている」と解説する。
横浜市青葉区に住む会社員田中克憲さん(61)は「抽象的な作品は想像力をかき立てられる。同じ動物でも表現がさまざまで楽しめる」と話した。
午前10時から午後6時まで。観覧料は一般310円など。2月17日は観覧無料。第1月曜は休館。問い合わせは同美術館電話046(845)1211。