鳥獣害に遭いにくいとされる葉ニンニクの消費拡大に向けて、秦野市内の生産農家らがそのPRに乗り出そうとしている。11日は手始めとして、高橋昌和市長と、市農業協同組合(JAはだの)の山口政雄組合長に葉ニンニクを贈呈。今後は試食会などを通じて市民らに広く知ってもらい、鳥獣害の解消だけでなく、新たな市の特産品にも結ばせたい考えだ。
JAはだのによると、市内で栽培されているのは、葉ニンニク専用の品種である「ハーリック」。独特の風味とシャキシャキした食感が特長という。
市内の多くの農家が鳥獣害に頭を悩ませている中、シカやイノシシなどが臭いを嫌う葉ニンニクが注目されたのはここ数年。2016年には鳥獣害対策として県が市内の農家で導入試験を実施し、徐々に作付面積が広がってきた。
昨年2月時点の生産農家は2戸で、作付面積も5アールだったが、JAはだのが同8、9月に基金を活用し、鳥獣害に遭いやすい山間部の農家を対象に種を配布したところ、扱う農家が増加。現在28戸が14アールで育てており、今シーズンは昨年11月から今年2月までに2万束を出荷する見込みだ。
同市菖蒲で農業を営む諸星一雄さん(72)も、栽培に取り組む一人。シカやイノシシ、ハクビシンに作物を食い荒らされるのが悩みの種で、4年前に葉ニンニクを育て始めた。
食害を避けられるだけでなく、9月上旬の植え付けから約3カ月で収穫できるのも農家にとっては好都合だ。野菜炒めや卵とじ、すき焼きの具材など多彩に調理できて食材としても魅力的だが、一方で認知度が低いことが課題という。
昨年は地元の業者が市内産の葉ニンニクを使ったギョーザを商品化し、好評を得ているが、市民への浸透は道半ば。そこで地域の話題になればと、諸星さんをはじめ5戸の生産農家が今回贈呈した。
11日の贈呈式に出席した高橋市長は「秦野の農業の振興につながる。バックアップをしていきたい」と約束。山口組合長は「山間地に適した作物だが、まだ浸透していない部分もある。試食を通して味の良さを知ってもらい、PRしていきたい」と力を込めた。
JAはだのによると、今後は市内のショッピングセンターや直売所で販売するほか、調理方法を広めたり、試食会で振る舞ったりする企画も温めているという。諸星さんは「消費が伸びないと栽培が続かない。まずは多くの人に葉ニンニクのおいしさを知ってもらい、鳥獣被害防止と特産化につながってほしい」と話している。