伊勢原、秦野の両市で8日、1年の無病息災を祈る「薬師粥(がゆ)」の振る舞いや、伝統行事の「石売り」が行われた。住民や子どもたちが一体となり、1年の平穏や子どもに病気や災いが起きないよう願った。
「日本三薬師」の一つである伊勢原市日向の日向薬師では「初薬師」が行われ、住民や信徒が地元産のダイコンやハクサイ、正月に供えた鏡餅などを切り、大鍋で煮込んだ。午前11時ごろから参詣者に振る舞われた。
本尊の国重要文化財、薬師三尊像も開帳され、多くの人が手を合わせた。薬師粥を調理した日向薬師世話人総代の能條好(よしみ)さん(72)は「大きな災害のない平和な年になってほしい」と祈願。初めて訪れた同市上粕屋のフラワースクール講師の杉本悠子さん(61)は「体も温まり、おなかいっぱいになった。健康で、仕事に励む1年にしたい」と話していた。
秦野市西大竹地区では、道祖神として祭られる石を子どもたちが住民に売り歩く伝統行事「石売り」が行われた。市生涯学習文化振興課によると、詳しい起源は不明だが、行事は明治時代中ごろから続き、小学校高学年の男子が参加する。
東町地区と開戸町地区に分かれた約20人の子どもたちは、同市西大竹の嶽神社を出発、道祖神として積まれている石をリヤカーに載せて家を回った。各家で「石売りとお飾り集めに来ました」と声を掛け、しめ縄、お札、だるまなどを回収し、千円から3千円程度で道祖神の石を販売した。
石を買った家は、子どもに病気や災いが起きず、子宝に恵まれるとされる。石は15日に子どもたちが回収し、元の場所に戻す。お金は子どもたちの小遣いになる。
開戸町地区の大将を務めた近藤瑞樹君(12)は「重くて疲れたけど、石が売れてうれしかった。来年も今の形を崩さず、後輩たちが続けていってほしい」。東町地区の大将の小形健史郎君(11)は「みんなと力を合わせて目的を達することができた。来年は、もっと参加してくれる小学生を集めたい」と話していた。
「石売り」は毎年、どんど焼きが行われる14日の前に行われる。13日には子どもたちが各家におでんや手作りのお札を売り歩く。