
その昔、乗りたかったのは深名(しんめい)線だった。廃線跡探訪で北海道を巡ったとき念願がかなった。いつ廃線になってもおかしくない。この機を逃せば後悔すると思った。早朝5時10分発の名寄行きは深川駅の4番線で身を震わせていた。
驚いたのは3両編成だったことだ。1両での運行が日常化しているはずなのに、この始発の大盤振る舞いはどうしたことか。理由はすぐ分かった。途中、幌加内(ほろかない)と朱鞠内(しゅまりない、写真)の各駅で1両ずつ切り離し、それぞれが深川行きの上りとなるのだ。その乗務員も同乗していた。
やがて1両きりとなった先頭の気動車も、終点名寄で8時10分上り始発として折り返す。つまり深川からつないだ3両は、その日の深名線のオールキャスト。顔見せである。車両形式もみな異なっていた。一日の終わりには回送などを経て、再び3両が一緒に深川の宿に戻るのかもしれない。
後日、時刻表を基に簡単なスジを引いてみた。なるほど深川始発がまだ暗い5時10分となるのも無理からぬことだった。それ以前のダイヤでは、早朝3両がセットになって発車することはなかった。深川と朱鞠内から1両ずつが別々に動きだす。それらの運行パターンは3日で一巡するように思われた。
空が白んで3両編成は深川を出た。朝霧がこめていた。こんな列車運用ではもう長くないかもなあ。深名線の車窓はかすんでいた。(F)