厚木市内に本社を置くコーヒー豆小売りの「南蛮屋」がこのほど、優良経営食料品小売店として農林水産省食料産業局長賞を受賞した。おいしいコーヒーのための数々のこだわりを顧客の満足と店の利益につなげる手法が高く評価された。
満足と利益の両立評価
「品質も味もいい。値段も高いけれど『それだけの価値がある』と認めてくれる顧客に支えられている」と平井誠一郎社長(66)。
多少なりとも余裕のある人が求める嗜好(しこう)品で、顧客の8割が大人の女性-という認識に立ち、コーヒー豆量り売り専門の「南蛮屋」27店舗(直営13、のれん分け14)を展開。扱う豆はすべて自社工場で炭火で焙煎(ばいせん)、香りと味が落ちないよう3週間以内の販売を徹底。菓子や食器、テーブル回りの小物など、コーヒー以外の商品も扱うが、あくまで主役はコーヒーだ。
もとは業務用のコーヒー豆粉砕機器製造・販売の会社。コーヒーをひく際に香りを損なう摩擦熱をなくすため、すりつぶすのではなく鋭い刃で「切る」タイプの機器を開発した。その後、焙煎した豆を喫茶店やレストランに卸すようになったが、個人経営の喫茶店が減ったことから小売りも始めた。1984年、当時は珍しかった量り売り直営店の南蛮屋を小田急線小田急相模原駅近くに初めて出した。
コーヒー好きの人が納得し、満足してくれる店にしたい。1年半前、厚木市下依知に新設移転した焙煎工場は、コーヒーのことを知ってもらう場として見学者受け入れを前提にした設計と内装になっている。また女性が喜ぶ「ちょっとした贅沢(ぜいたく)」をさまざまに模索。工場と同じ敷地にある本店「南蛮屋ガーデン」で行うスイーツバイキングも人気だ。
全国の中小店舗などを対象にした「優良経営食料品小売店等表彰」は2016年度で40回目。農水省や日本政策金融公庫などが後援し、今回は最優秀(農林水産大臣賞)3件、それに次ぐ産業局長賞には6件が選ばれた。