横浜・本牧の地に長年暮らした小説家・山本周五郎の、知られざる素顔に迫る書籍が3月、出版された。ゆかりがある地元の市民有志が制作。「写真嫌いでへそ曲がり」と評された文豪の秘蔵写真も掲載している。市民有志は「若い世代が作品を読むきっかけにもなれば」と期待している。
「山本周五郎の記憶 横浜の光と影を愛した文豪」(歴史探訪社)の制作を手がけたのは「山本周五郎記念事業団」。周五郎の孫の妻で、今も本牧で暮らす松野由紀子さん(58)が団長を務める。周五郎の作品を広く紹介するために交流会や講演会などの企画のほか、記念館設立なども目指している。
また市民有志でつくる「本牧周五郎会」も協力した。同会は、周五郎をしのぶ記念碑を昨年建立したことを契機に発足。代表の大久保文香さん(82)は、本牧に移り住む際に周五郎が頼った出版社の経営者で著名な装丁家でもあった秋朱之介(あきしゅのすけ)の長女だ。周五郎は当初、秋家の離れに転居し、そこで執筆に励んだという。