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追う!マイ・カナガワ
「湘南」どこからどこまで 永遠の謎、地域に定義なく

話題 | 神奈川新聞 | 2023年1月1日(日) 04:50

「湘南」と聞くと、青い海や江の島、江ノ電の光景を浮かべる人が多そうだ=鎌倉市七里ガ浜

 「ずっと気になっているのですが、『湘南』ってどこからどこまでなのでしょうか」。そんな疑問が追う!マイ・カナガワ取材班に寄せられた。同じ質問は取材班が発足した2年前から多数届いている。湘南といえば夏の海が浮かぶ人は多いかもしれないが、冬晴れの空に雪化粧した富士山が映える景色こそ湘南好きにはたまらないだろう。神奈川新聞で「湘南エリア」をカバーする鎌倉支局の現・前記者が、誰もが知りたい永遠の謎に迫ってみた。

多くのジャンルに登場

 太陽光が反射してきらめく波。濃淡のブルーが美しいコントラストを描く空と海に、江の島と富士山が重なる。そんな景色を臨む国道134号沿いを、江ノ電がゆったりと走る…。

 「湘南」と聞けば、こんな心躍る光景を連想する人は多いだろう。サザンオールスターズのファンの聖地・茅ケ崎も定番の一つ。沖合に烏帽子(えぼし)岩を望む海岸をイメージすれば、〈遠く 遠く 離れゆくエボシライン~〉と名曲のメロディーも浮かんでくる。

 ほかにも、加山雄三さんや4人組ロックバンド「TUBE」、人気漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」など、世代によって連想する事柄はさまざま。四季折々の表情を見せる絶景のほか、音楽、映画、アニメといった数え切れないほどの作品も浮かんでくる。これだけ多くのジャンルで「湘南」が取り上げられているのは、人々を引きつけてやまない魅力があることの表れだろう。

欠かせない海

サザンビーチちがさき=茅ケ崎市

 しかし、湘南の名が付く自治体はない。「湘南がどこからどこまでかは、終わりなき論争」とされ、「永遠の謎」とも言われる。まずは、町を歩いて多くの人の声を聞いてみた。

 茅ケ崎で生まれ育った男性会社員(27)は「湘南といえばサザンオールスターズだからやっぱり茅ケ崎は外せない。あと江の島も」。東京都の女性会社員(30)は「鎌倉の七里ガ浜、江の島、茅ケ崎あたりの海で、ドライブでテンションが上がるのが湘南のイメージ。逗子と葉山も入ると思う」と言う。湘南の定義にやはり海は欠かせないようだ。一方、御用邸のある葉山町の自営業男性(45)は「葉山は葉山。湘南とひとくくりに呼ばれるのは、なんか違う」と笑う。

「湘南」に違和感も

湘南での暮らしや観光スポットなどを特集した書籍は数え切れない=鎌倉市小町のかまくら駅前蔵書室「カマゾウ」

 道行く人の意見に耳を傾け、次に足を運んだのは、鎌倉にまつわる本を約2千冊そろえる会員制図書館「かまくら駅前蔵書室」(カマゾウ)だ。年間延べ5千人が訪れる地元の憩いの場で、ゆったりと時間が流れる部屋に入ると、湘南がタイトルに付く小説や雑誌、書籍が本棚から次々と出てきた。

 室長で平塚市在住の鈴木章夫さん(64)に話を聞くと、「テレビで湘南が取り上げられると、『どこからどこまで』問題はやっぱり話題になる」と教えてくれた。ただ「鎌倉の人も『鎌倉は鎌倉』と、湘南と呼ばれることに違和感がある人は多いかも」とも話し、ほほ笑んだ。「これだけ人気があるのに定義がはっきりしない地域って、不思議で面白いですよね」

名が付くもの多く

神奈川の湘南あれこれ

 県内には、湘南と名の付く場所や物事がたくさんある。湘南モノレールの湘南江の島駅(藤沢市)、湘南港(同)、県立湘南高校(同)、逗子から藤沢までを結ぶかつての有料道路(現在は国道134号)の「湘南道路」など、気候が温暖な相模湾沿いエリアで目に付くことは多い。

 他にも横須賀市と葉山町にまたがる「湘南国際村」や平塚市の商業施設「ららぽーと湘南平塚」、「湘南ひらつか花火大会」、日本三大七夕祭りの一つとして親しまれている「湘南ひらつか七夕まつり」もある。秦野市にも湘南の名が付く霊園や病院などもあるようだ。

 歴史を振り返ると、秦野─二宮間には「湘南軌道」(1937年廃業)が走っていた。06(明治39)年、秦野─二宮間の約10キロで湘南馬車鉄道が開業し、蒸気機関車の導入で湘南軽便鉄道に、その後湘南軌道に改称。日本地名辞典によると、旅客のほかに特産のたばこや材木も運んでいたという。

 多くの人々に親しまれ続けるも、その定義ははっきりとしない「湘南」。石原慎太郎さんの小説「太陽の季節」も「湘南海岸」が舞台といわれ、逗子海岸に記念碑がある。昨年12月から映画公開された人気漫画「SLAM DUNK」でアニメのオープニングに登場する江ノ島電鉄鎌倉高校前駅の踏切も、「湘南の光景」などと話題になる。

 その名が多く使われるのは、言葉の持つブランド力によるものなのだろう。藤沢市の不動産会社のある担当者も「『湘南』と付くのはやはりブランドです。都心にも近く、適度の田舎で、コロナ禍になって物件はよく動いています」と話す。

地域の逸話尽きず

〝湘南〟に欠かせない海は、毎日違う表情を見せる=葉山町一色

 「湘南」を巡るエピソードは尽きない。

 例えば、誰もが知る自動車の「湘南ナンバー」だ。対象は藤沢以西の7市11町。ちなみに鎌倉市は対象外で、横浜ナンバーである。

 藤沢市教育委員会発行の書籍『湘南の誕生』(2005年)によると、湘南ナンバーの管轄区域の決定は、相模ナンバー地域の自治体にとっても大きな関心事だった。「湘南ナンバー=国から正式に湘南地域であることへのいわばお墨付きをもらうことになるため、各自治体の関心が高かった」という。

 最終的には当時の運輸省が自動車検査登録事務所の処理能力と各自治体の自動車登録台数などを基に線引きを行い、区域を決めたのだそうだ。

湘南ベルマーレのサポーター

 「湘南」の逸話はスポーツ界にもある。サッカーJ1「湘南ベルマーレ」だ。

 00年にベルマーレ平塚から湘南ベルマーレに改称。広報の遠藤さちえさんによると、実はJリーグ参入当初の1992~93年ごろには「ベルマーレ湘南」というチーム名の構想もあった。だが「Jリーグから『湘南』という地名はないから駄目と断られました」。

 だが、2000年ごろ親会社のゼネコンが経営から撤退せざるを得なくなり、クラブ存続の危機に。「平塚市の人口25万人だけでは支え切れず広い支援が必要で、市民球団として生まれ変わろうと、厚木や伊勢原、小田原、茅ケ崎など10市町をホームタウンとして拡大しました」。そして湘南の名を掲げることが認められ、17年には鎌倉市など2市8町もホームタウンに加わった。

 調べれば調べるほど奥が深い「湘南」。読者の疑問に答えるため、何かヒントを探そうと、次は「湘南発祥の地」とされる大磯町に向かった。(竹内瑠梨、鈴木崇宏)

=次回以降は随時掲載


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 神奈川新聞社のオンデマンド調査報道「追う!マイ・カナガワ」(マイカナ)の取材班は、「湘南はどこからどこまで?」をテーマにオンラインアンケートを実施します。ご意見は後日紹介するほか、今後の取材や記事に生かしていきます。

 アンケートのフォームから、多くのご意見をお寄せください。(マイカナ取材班)


 神奈川新聞社は暮らしの疑問から地域の困り事、行政・企業の不正まで、無料通信アプリLINE(ライン)で読者から寄せられた取材リクエストに幅広く応える「追う! マイ・カナガワ」(略称・マイカナ)に取り組んでいます。

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