北海道・釧路から一冊の本が届いた。「雄別炭砿閉山50年 雄別・尺別・上茶路」。かつて釧路炭田の有力炭鉱だった「雄別炭砿」の、歴史や風景、生活ぶりなどを、数多くの写真や資料で紹介している。
大手炭鉱会社だった「雄別炭砿株式会社」は、雄別炭砿、尺別炭砿など道東3カ所と石狩炭田1カ所で炭鉱を経営していたが、石炭産業の斜陽化で1970(昭和40)年に閉山、会社も解散した。計2万人近い人たちが数カ月でヤマを離れ、町が消えた。
釧路市立博物館は、雄別OB、関係者などの協力で、当時の写真や資料を掘り起こし、証言を集め、2020年には企画展も開いた。その記録集として学芸員の石川孝織さんがまとめたのが、今回の一冊だ。
鉄道ファンとして注目するのは、鉄道関係の写真、資料が豊富なこと。石炭を運び、炭鉱員や家族の足になった雄別鉄道や尺別鉄道は、生活に密着した存在で、ユニークな車両もあった。
真っ白に塗られ、洗濯機のテレビCMに使われた蒸気機関車1001。現在は釧路製作所で保存されている8722。ディーゼル機関車YD1301は、その後、釧路の太平洋石炭販売輸送に移籍して2019年まで石炭を運んだ。
蒸気機関車C111は、個人保存などを経て、東武鉄道が動態復元。C11123と番号を変え、ことし7月に営業運転を開始したのはうれしいニュースだ。
今回の本には掲載されていないが、実は雄別炭砿、神奈川新聞にも縁があった。1951(昭和26)年の元日紙面に、当時の会社名である「雄別炭礦鉄道」の横浜営業所名で、広告が掲載されていた。港を通じて、横浜とつながっていたのだろう。
「雄別炭砿閉山50年」は、A4判166ページ、1500円(税込み)。同博物館の窓口で販売しているほか、通信販売にも対応している。(a)
ヤマが消えて50年、振り返る冊子 動態復元したSLも
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雄別炭砿閉山50年の冊子 [写真番号:1111385]
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鉄道関係の写真には、CMのために白く塗られた機関車も [写真番号:1111386]
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右肩の写真のC11を、今回東武鉄道が動態復元した [写真番号:1111387]
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神奈川新聞に掲載された「雄別炭礦鉄道」の広告 [写真番号:1111396]
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当時の雄別炭砿などの位置 [写真番号:1111390]