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鉄道コラム 前照灯(301)
時間の止まった古都にたたずむ タイ国鉄でアユタヤへ

話題 | 神奈川新聞 | 2019年10月1日(火) 00:00

タイ国鉄の北本線を走る快速列車。ディーゼル機関車が引く=ドンムアン駅

 バンコクの玄関口、タイ国鉄のフアランポーン駅は、かまぼこ形の屋根を持つ。100年の歴史を誇る重厚な駅舎だ。

 とはいえ、通勤客は繁華街のシーロムやスクムウィットなどにつながる地下鉄(バンコク・メトロ)の駅の方に多い。開業時に在位していたラーマ5世の肖像画が見下ろす国鉄駅のコンコースには、トランクを携えた長距離の移動者が目立つ。

バンコクの中央駅、フアランポーン駅のコンコース

 北へ向かう快速列車が、ディーゼル車に引かれて動き出した。線路のすぐ脇に迫る民家をかすめながら、ゆっくり進む。

 3等客車は4人がけのボックスシート。空調はない。昔の日本の国鉄のように、天井の扇風機が大活躍する。

タイ国鉄の客車

 30分ほどでドンムアン駅に着く。駅に隣接するドンムアン空港はかつて、タイだけでなく東南アジアにとってのハブ空港でもあった。ここを過ぎると列車はスピードを上げ、「快速」らしくなる。全開の窓の外を流れる風景も、田園地帯に変わってきた。

アユタヤ駅を発車する列車。次駅で東へ分岐し、ラオス国境付近に向かう

 水田のなかを駆け抜けた列車は1時間ほどで、アユタヤの駅に滑り込む。バンコクからは80キロの距離。鉄道やバスの便も多く、日帰り圏内の観光地として人気が高い。

 チャオプラヤ川と支流に囲まれた広い中州に11世紀に造られたアユタヤは、世界史の教科書に出てきた「日本人町」の存在でもなじみ深い。河川交通を利用した貿易で栄華を極め、欧州各国とも交流する国際都市を築き上げた王朝だった。だが18世紀にビルマの王朝に敗れ、街は破壊されてしまう。

仏教寺院の遺跡、ワット・マハータート=タイ中部アユタヤ

 王宮や寺院の遺跡が、街のあちこちに散らばる。壮大な伽藍を残す寺院の遺跡には、切り落とされた仏頭が並ぶ。戦火をくぐって、そのまま時間が止まったようだ。

 …いや、そうでもない。

 王の遺骨が納められた仏塔が立ち並ぶワット・プラシーサンペットに、おそろいの体操着姿の中学生たちがやってきた。「すみません、写真撮ってください!」 こけむすレンガの壁を背にした女の子たちから、スマートフォンを手渡された。

 中学校の修学旅行で訪れた奈良・明日香を思い出す。自分たちも、他の旅行客に頼んだっけ。でも、預けたのは使い捨てカメラだったかな。

 やっぱり流れている時を感じさせられる。この古都が歩んできた歴史の悠久さには比べるべくもないけれど。

 
 

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