豊かな緑と海に囲まれた三浦半島には、農業や漁業、畜産など、幅広い生産者が集まっている。このところ目立つのは、生き生きと働く30、40代の若手の姿だ。会社勤めをしてから家業を継ぐと決めたり、全く違う世界から飛び込んできたり。最初から「食をつくる」という道を選んだ人ばかりではなく、それぞれ背景も異なるが、深い思いを持ち、独自の取り組みがきらりと光ることは共通している。4市1町で、食に携わる若い生産者にスポットを当てた。
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家業を継いで7年。三浦市南下浦町金田にある「元気もりもり山森農園」代表の山森壯太さん(37)は、新しいスタイルの農業に挑戦している。
東京湾からの潮風を受けながら、2・7ヘクタールの畑を耕す。種類は三浦名産の大根、キャベツ、スイカからニンジン、タマネギ、シイタケなど20種。化成肥料と農薬の使用を通常レベルの半分以下に抑え、自然環境に配慮した栽培を心掛ける。
野菜は作業場できれいにして近隣のスーパーにも卸しているほか、無添加100%のニンジンジュースを商品化。ネット販売も手掛け、甘くてすっきりした味が人気を呼んでいる。
農園を支えているのが障害者だ。雇用契約を結ぶのが難しい人が軽作業などの就労訓練を行う事業所「虹の橋」を農園内に設け、13人の障害者が働いている。
農業は草取りから収穫、運搬、洗浄、選別、箱詰めと多様な仕事をこなす。「全体を任せるのは難しいが、個々の適性に合った作業のときは集中して働く」と山森さん。無理にさせるのではなく、「また来てくれてうれしい」と思うほどのおおらかさで「農福連携」を実現している。
農家の長男に生まれたが、農業とは距離を置いていた。大学を卒業して28歳まで企業で働いた。体調が優れない父親を支えようと2011年3月に退職。その年に父親が亡くなってからは、農園を引き継いだ母親の手伝いをしていた。徐々に経験を積んで「農業を改革したい」という思いが募り、14年から経営を担っている。
農作物の出来は天候に左右され、相場の変動も激しい。設備投資をしても思うように売り上げは伸びない。「まだまだ大変だが、買ってくれた人が『おいしい』と喜ぶ姿が励み。仲間や取引先と一緒に、期待以上の味を提供できるよう頑張りたい」と力を込めた。
問い合わせは、同農園電話090(2471)1368。
新しいスタイル挑戦 三浦・山森壯太さん 農業
畑で収穫したばかりのニンジンを抱える山森さん=三浦市南下浦町金田 [写真番号:464566]
畑で収穫したばかりのニンジンを抱える山森さん=三浦市南下浦町金田 [写真番号:464576]