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ボールペンで描く「思い出絵画」 昭和の暮らしぶり伝え

話題 | 神奈川新聞 | 2020年10月5日(月) 11:31

故・佐草さんがボールペンで描いた「思い出絵画」

 ボールペン1本で描かれたモノクロの昭和─。幼少期の記憶をたどり、1930年代の平塚の原風景を描き続けた故・佐草健さんの作品展が平塚市博物館で開かれている。生前は教師一筋、趣味としてボールペンのみで陰影を付けて描いた「思い出絵画」。同館は「当時の写真資料は少なく、かつての暮らしぶりを伝える貴重な地域資料」と学術的価値を見いだしている。

 1月の小正月に同市中原地区でかつて行われていたセートバレー(道祖神祭)を描いたボールペン画。道祖神の石碑の横に正月飾りのわらなどで仮作りされた小屋を子どもたちが踏みつぶしている様子が細いボールペンの筆致で緻密に描写されている。祭りではわらなどの残骸を子どもたちが街中を巡って引きずり回し、家々の厄を払った後で焼いたという。

 現在は簡素化したどんど焼きの習慣しか残されておらず今は消えた祭り。「市内の一部の地区にみられる珍しい風習。佐草さんの絵で細かい状況が初めて分かった」と同館の浜野達也学芸担当長は解説する。

現在のどんど焼きにつながる「セートバレー(道祖神祭)」を描いたボールペン画

 佐草さんは26年に生まれ、市立松原小学校長など40年以上にわたり教壇に立った。2014年には瑞宝双光章を叙勲され、17年に91歳で亡くなった。

 ボールペン画は70歳を超えて始めた趣味。「子どもの頃の記憶を後世に伝えたい」と生前語り、自らの少年時代の風景を約70枚の絵に残した。

 現在は地下水路となって姿を消した小川で魚釣りをする様子や、ふんどし姿で川遊びする子どもたち…。過去の情景を描いた作品は全て着色のないモノクロ画で佐草さんは自ら「思い出絵画」と呼び、教え子らに見せるのを楽しみにしていたという。それまでは美術を学んだこともなく、生前に個展などを開くこともなかったため、長らく日の目を見ることもなかった。

 地元の小学校に絵のコピーが飾られていることを知った市博物館が調査。カメラが一般に普及する以前の時代で当時の写真はほとんどない。それでも描かれている絵が当時を知るお年寄りらの証言や史料などとも合致し、忠実に描かれていることが判明した。

 展示会はボールペン画のほか、佐草さんが作った地元の山車の模型など計120点を展示。浜野学芸担当長は「写真には残されていない当時の一こまをビジュアルで感じてほしい」と呼び掛けている。

 展示会は11月29日までで、午前9時から午後5時まで。入場無料。月曜休館(11月23日は開館、翌24日休館)。

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