子どもたちが能楽を体験する「鎌倉こども能」の発表会が20日、鎌倉能舞台(鎌倉市長谷)で行われた。市内在住の小学4年~中学生の10人が、地元の能楽師中森貫太さん(59)らに半年以上指導を受けた成果を披露。新型コロナウイルスの影響で稽古が中断した間も自主的に練習を重ね、凜とした姿で舞台に立った子どもたちは「みんなで一つの物語を作れた」と達成感を味わい、「大切な伝統をこれからも残したい」と思いを強くしていた。
色とりどりの装束をまとい、子どもたちが披露したのは、病に伏す源頼光と家来が、蜘蛛くもの妖怪を退治する約40分の物語「土蜘蛛」だ。囃子はやしに合わせて古典的な長いせりふも堂々と披露し、会場は拍手に包まれた。
「こども能」は伝統芸能の継承のため、市が2018年に始めた。市内唯一の能舞台で、中森さんらが礼儀作法や所作、声楽などを半年かけて教える。伝統芸能を本格体験できる貴重な機会だが、今年はコロナ禍で3月から稽古の中断を余儀なくされた。
その影響で途中で参加を断念した生徒らの分まで、残った子どもたちは自主練習を重ね、7月には感染策を講じて稽古が再開された。発表会は中止も検討されたが、来場者を大幅に縮小し、半年遅れで開くことができた。
初参加で土蜘蛛役を務めた中学2年の景山豊作さん(13)は「昔の言葉は難しいけれどとても丁寧。伝統文化を残す大切さを学んだ」と笑顔だ。中森さんは「子どもたちが能に興味を持ち続けてくれたらうれしい」とほほ笑んでいた。