
医薬品や食品の安全性、有効性を評価、解析し、国の施策に反映させる役割を担う国立医薬品食品衛生研究所(衛生研、東京都)が、国際戦略総合特区に指定された川崎臨海部(殿町3丁目地区)に移転することが固まった。同特区指定後、対象エリアに国の機関が立地する初めてのケースとなる。用地は国が一部取得するほか、市が無償貸し出しする方針。特区への創薬、医療関連企業の集積、羽田空港への近接を生かした国際共同治験(臨床試験)の促進に弾みがつきそうだ。
移転予定地はUR都市機構が所有する約2・7ヘクタール。厚生労働省は総合特区推進調整費(約18億円)を活用し1ヘクタールを取得。残る1・7ヘクタールは川崎市が2014年度までに段階的に取得し国に無償提供。建物の建設費は国費で賄う。
移転は3月上旬に決定する総合特区計画の認定を経て正式に決定する。4年程度をかけて整備を進める見通し。
衛生研は1874(明治7)年に発足した国内では最も古い国立試験研究機関。医薬品、食品、生活に関連する化学物質などについて、品質、安全性、有効性の評価のための試験、研究、調査に取り組んでいる。健康や良好な生活環境の維持、向上に対する国民的なニーズが高まる中、機能強化へ移転を検討していた。
移転先の殿町地区は約40ヘクタール。ライフサイエンス(生命科学)分野の拠点形成へ、同市が08年から整備を進め、昨年夏には臨床試験、試験法開発の国際的な機関である実験動物中央研究所(実中研)再生医療・新薬開発センターが開設。市の環境総合研究所、健康安全研究所が入居する産学公民連携研究センターが12年度、運用を開始する。
特区指定を受け、市は同地区への創薬、医療関連の民間企業誘致を本格化。衛生研、実中研という生命科学分野の国内二大拠点の立地によって、新薬、新規医薬機器開発の迅速化などを見越し、企業集積が促進していくとみている。
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