
国の指定を受けた国際戦略総合特区の取り組みによる対象地域の経済効果(5年後)について、川崎市が約3千億円と試算していることが分かった。全国への波及効果は約5千億円を見込む。ライフサイエンス(生命科学)、医療分野の産業の拠点形成化へ、市は認定地域の中心となる殿町3丁目地区(川崎区)への企業集積を図るため、土地所有、施行者のUR都市機構とともに誘致活動を積極化する構えだ。
市は、特区構想策定に当たって、個別化、予防医学を実現するためのネットワークの整備、革新的な医薬品、医療機器の評価・解析手法の確立、ニーズ主導のマッチングによるベンチャー企業の創出、産業化などの政策課題の解決策を実施することで生まれる経済波及効果を試算。
設備投資や医療機器開発、研究開発受託、開発期間短縮の効果、研究開発費などを総合し、5年後には2955億円の経済効果が生まれるとしている。ライフサイエンス、医療分野の産業化を通じて、医薬品、医療機器、健康食品・サプリメント、健康志向食品、フィットネスといった分野で新市場が創出され、20年後には市場創出額約14兆円、新たな雇用創出約23万人を見込んでいる。
特区の拠点となる殿町3丁目地区の大半は、いすゞ自動車の工場跡地だった。多摩川を挟んで国際化した羽田空港に臨む立地で、国際競争拠点の形成へ向け、市は(1)環境、ライフサイエンス研究機能(2)臨空関連・業務・研究開発機能(3)にぎわい・交流機能、商業、レクリエーション、ホテル、コンベンション―の3分野を柱とするまちづくりガイドラインを策定している。
URは同地区の所有地を対象にした企業立地セミナーなどを開催しており、本年度中に公募を開始する計画だ。同地区内ではすでに、再生医療の実現や医薬品開発へ向けた臨床試験などに取り組む実験動物中央研究所が稼働。2012年度中には、同市の環境総合研究所や健康安全研究センターが入居する産学公民連携研究センター(仮称)が整備される。
立地企業についても市はライフサイエンスや医療、環境に関連した業種を中心に誘致したい方針で、関係者によると、企業が照会するケースも出ているという。
市は局長級の担当者を配置した臨海部国際戦略室を来年1月に設置。阿部孝夫市長は「羽田空港への近接、世界有数の産業、高度なものづくり技術、最先端の研究開発機関などの地域資源を最大限活用し、日本経済をけん引する拠点形成を進める」と述べた。
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