藤沢市の複合防災拠点(津波避難ビル)用地取得をめぐり、取得の根拠となる計画書に虚偽記載があった問題で、市は26日、「計画策定の手続きに不備があった」として、取得の取りやめを発表した。一連の問題では、1月の再整備計画書、4月の変更計画書の作成日などに実際と異なる日付を記載していたことが神奈川新聞社の調べで分かっているが、この二つの計画書をいずれも6月に作成していたことも新たに明らかになった。虚偽内容を記載した理由について市幹部は「十分検討したという体裁を整えたかった」としている。
二つの計画書に記載された日付が異なることは、両文書に機械的に割り振られた文書番号から判明していたが、作成を担当した計画建築部長は同日、「いずれも6月に作成された」と話した。市はこの計画を基に8月末、市土地開発公社に用地取得を依頼していた。
計画建築部長は、計画は2011年1月から検討してきたとした上で、実際と異なる日付を記載した理由について、「十分計画を練ったという事を、文書上残したかった。計画はきちっと作っておかなければいけないと思った」と述べた。
市が取得しようとしていたのは、国道134号沿いの一画(片瀬海岸2丁目、敷地面積約2千平方メートル)で、03年まで旧江の島水族館があった土地。
今年3月、都内に本社のある企業が取得していた。
市幹部によると、計画を策定したとする6月より以前の、4月13日前後に海老根靖典市長ら市幹部数人が会議を開き「その際、市長が土地を取得する方針を決めた」という。
3月に土地を取得した企業は、市が取得の取りやめを決めたことについて「何も申し上げることはできない」としている。
◆公文書への認識の低さ露呈
虚偽の内容を記載した計画書を基に、数億円規模の土地を取得しようとしていた藤沢市。計画書には、実際と半年も異なる日付を作成日として記載し、市長以下十数人が押印しており、取得の根拠となる公文書について組織的にずさんな処理が行われていたことになる。虚偽作成は刑法の罪に問われることもある公文書に対する認識が、あまりにも低いと言わざるを得ない。同市では、別の土地の不透明な取得をめぐり、市議会が真相究明のため現在、百条委員会を設けている。
今回の虚偽記載では市長決裁がいつ行われ、計画が策定されたのかを確認できない状況になった。取得は白紙とされたが、なぜこうした事態が起きたのか徹底解明が求められる。
今回は土地購入の根拠となる計画書で、虚偽の内容記載は重大だ。私有地を公有財産として取得するには、客観的な公正性と必要性が欠かせない。
今回明らかになった問題をめぐっては、市内部からも疑問の声が上がっている。事実関係を調査している市行政総務課も「なぜ、日付を変える必要があったのか。重く受け止めている」としている。
行政行為の公正性を担保するには最終的に公文書しかないことを踏まえ、市や市議会には解明に向けた重い責任がある。
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