
外国人観光客を伊勢原市の大山に呼び込もうと、県が大山に特化した指さし式会話帳を作成している。日本語と外国語が併記され、指でさすことで、話さなくても会話ができる。県は地元の宿坊(旅館)、飲食店、土産物店に試作版を配布し、活用セミナーを開催。簡単に言葉の壁を越える秘密兵器は3月にも完成の予定で、関係者の期待は高まる。
「目の前で中国のお客さんが困っています。『どうしましたか』は何と言いますか。ゼンモーローァ」
今月24日夜の伊勢原市大山の大山公民館。中国語講師の高維さん(29)の後に続き、会話帳を手に観光関係者10人が唱和した。
A4判三つ折り26ページの会話帳には、「おはようございます」「宿泊」などの日本文と外国語の訳文がイラスト付きで並んでいる。中国語、英語、韓国語を用意。特に中国語は中国で使われる簡体字と、主に台湾、香港で用いられる繁体字の2種類をそろえた。各言語2千部ずつ計8千部を作成し、無料配布する。
市販の指さし式会話帳は日本人が海外旅行に持って行くものが主流。今回の会話帳は逆に、観光地で働く日本人が外国人観光客をもてなす視点で編集されている。
大山に特化し、大山を中心に厚木の七沢、秦野などの見どころ、登山ルートや公共交通機関の使い方なども掲載した。「男坂より、女坂の方が勾配がやや緩やか」「大山の豆腐は地元の豊富な天然水で作られている」などと豆知識もふんだんに盛り込んだ。
県は大山を皮切りに、今後は厚木、秦野の3カ所で試作版を配布し、活用セミナーを開催。使用法を教える一方で、出席者から出た要望を完成品に反映させる。
大山先導師会旅館組合の古宮宏和さん(59)は「外国人観光客は目立って増えているが、言葉が通じず、接客に苦労している面もある。会話帳は非常に便利。完成後はいつも持ち歩き、積極的に使いたい」と話している。