
逗子市の工事発注で施工業者が入札で決まったにもかかわらず、本契約締結が議会で否決される異例の事態となっていることが24日、分かった。施工費の補正予算案を審議した委員会が設計に関する付帯決議を付けて可決したが、市の担当が設計変更せずに入札を実施、業者と仮契約していた。市は7日に再公告、29日に開札する。施設開設は3カ月余り先送りされる見通しだ。
工事は同市桜山にある青少年会館・教育研究所(3階建て総床面積1594平方メートル)を全面改修し、障害のある子どもたちが利用できる「療育・教育センター(仮称)こども発達支援センター」として開設する計画。当初は2016年6月末までに工事を終える予定だった。市は中核的支援施設と位置付け、15年9月の市議会で3億2432万円の補正予算案を提案した。
ところが、市議会の教育民生常任委員会で「外観にこだわらず、中身を充実するよう」付帯決議が付けられた。具体的には外壁ルーバー(約550万円)をやめ、建物3階部分を改修する内容だった。
しかし、本会議では付帯決議が付けられず原案通り可決されたため、市は設計を変更せずに工事を公告、3社が応札。横浜市内の建設会社が落札、仮契約した。15年12月の本会議で「付帯決議をどのように検討したのか」「納得の得られる回答がない」などと議員が反発し、本契約締結が否決された。一部市議は「業者に落ち度はない」と契約に賛成した。
応札した建設業者の幹部は「総工費約3億のうち問題なのは約550万円。入札手続きに不備があったわけでもない。通常は本契約後に、設計変更で対応するのが筋。議会で否決など聞いたことがない」と話す。
市担当者は「議員へきちんと説明ができなかった」と話している。また、1回目の入札結果が業者名、入札金額ともに公表されている点について、市管財課は「今回の事例を踏まえ、金額のみを公表することも検討する」としている。県内では不測の事態に備え、金額のみ公表としている自治体もある。