元県議会議長の中村省司県議(70)=鎌倉市=の政務活動費をめぐり、同市の男性が住民監査請求をしていた問題で、県監査委員は4日、2014年度の政務活動費に計上したホームページ(HP)の開設・維持経費49万5千円について「支出の事実は認められない」と認定した監査結果を公表した。所属していた自民党県議団の政活費の収支は赤字だったため、県に返還させるよう求めた請求自体は棄却した。決定は3日付。
監査結果によると、中村氏は14年4月~15年2月、HPの開設・維持経費として毎月4万5千円を計上。市内の会社に発注したとされる領収書が添付されていたが、中村氏の事務所の元職員と会社の代表者は監査委の調査に対し「(経費は)支払われていない」と説明。元職員は領収書について「自分が作成した」と答えており、監査委は「領収書は事実に基づくものとは認められない」と結論付けた。
男性はこのほか、実態がない広報紙の作成代名目で約92万円を詐取したとも主張したが、「監査権限では支出の有無の判断には至らなかった」とした。
政務活動費は、当時所属していた自民党県議団を通じて中村氏に交付。14年度の団の支出額は交付額を約1275万円上回っており監査委は49万5千円を除いてもなお支出が上回るため「県に返還請求権は発生しない」として監査請求は棄却した。同団は49万5千円の返還を求め、中村氏も応じる考えを示した。
中村氏は現在9期目。今月2日に今回の問題で迷惑を掛けたとし、自民党を離党、県議団も離団していた。
請求を行った同市の著述業岩田薫さん(62)は「不正が見つかったのだから、請求を認めてほしかった」と指摘。政務活動費の不正受給に当たるとして、週明けにも同氏を詐欺容疑で横浜地検に刑事告発する意向を示した。
「経緯存じあげない」
「県民や県議会全体に疑念を抱かせたことは誠に不明を恥じる。県民の信頼を損ねないよう説明責任を果たしていきながら、身の潔白を示したい」。監査結果を受け、中村省司県議は4日、県庁で会見して一連の経緯を説明した。
住民監査請求で支出の事実がないとされたホームページの開設・維持経費。請け負ったとされていたのは、中村氏の元秘書の中沢克之鎌倉市議(49)が代表を務める会社だった。中沢氏は問題の領収書について、監査委の調査に対し「知らない」と答えていた。
会見で中村氏は「自分の責任が全てないとは考えないが、(事務所スタッフを)信頼して任せていたのは事実。その経緯は存じあげない」と説明。「さまざま地域課題がある。与えられた任期、しっかり務めを果たしたい」と述べ、県議辞任については否定した。自民党県議団への返金に関しては、「監査結果に基づき、団長からの申し出なので速やかに対応する」との意向を示した。
土井隆典議長は「支出の事実が認められないとの判断は誠に遺憾。議長として、政務活動費の透明性確保と適切な支出の徹底を図っていく」とコメント。同県議団の梅沢裕之団長は「監査結果を会派として重く受け止めている。今後、書類のチェック体制を見直す」との考えを示した。
中沢氏は神奈川新聞社の取材に「コメントは差し控えさせていただく」と話した。