
福田紀彦市長が19日で就任丸2年を迎え、1期4年の任期後半に入る。市長選で掲げた「待機児童の解消」と「中学校給食の実施」という目玉公約は前半で実現のめどをつけた。しかし、マニフェスト実行による歳出増に加え、今後は本庁舎建て替えなど大規模事業が続々と控えるだけに、歳出改革や行政改革の手腕も問われることになる。
福田市長は「前半の2年、他都市に追いつかなければならない分野に集中的に取り組んだ。これからは上のステージを目指し、社会変革を促す先導的な取り組みに力を入れる」と強調。新産業創出を目指す臨海部・殿町国際戦略拠点の展開などに意欲を示す。
2013年の市長選では14テーマ26項目のマニフェストを掲げ初当選。今年7月に「特別秘書」を設置する条例案が市議会で否決される“失点”はあったが、着々と公約を前に進めてきた。
特に13年4月に438人と県内ワーストだった待機児童対策では認可保育所の受け入れ枠拡大に加え、認定保育園の積極活用のため保育料補助を最大5千円から2万円に拡充。区役所の保育担当職員も増員し、今年4月に解消を達成した。
前任の阿部孝夫市長が「食育は家庭が基本」と消極的だった中学校給食は大転換。3カ所に給食センター(15年間の建設・運営委託で約347億円)を整備し、17年12月までに全校で実施することとなった。
めどが立っていなかった「小学6年生までの小児医療費無料化」も、今月公表した総合計画素案に「17年4月から」と明記。ただし財政状況も勘案し「無料化」ではなく窓口での一部負担導入を検討する。
一方で、「市内全域Wi-Fi化」や「有償ボランティア制度創設」など進捗(しんちょく)がはかばかしくないものも。福田市長は「一言一句変えないと意固地になり、公約が目的化してはいけない。趣旨を大事にして形につなげたい」と話す。
市議会からは毎年の歳出増につながる目玉公約の実行に伴い、「中長期の財政運営は大丈夫か」「財源を明確にすべきだ」との厳しい声が強まる。市は19年度以降は減債基金からの借り入れなしで予算が組める見通しを立てるが、これから本庁舎建て替え事業(総額430億円)、JR南武線連続立体交差事業(1476億円)、羽田連絡道路整備(300億円)など大型事業がめじろ押しだ。
このため歳出抑制や行革は課題。今月公表した行財政改革計画素案では、あくまで検討項目の位置づけながら、市民サービスに関しても、バスに優待乗車可能な証明書を高齢者に交付する外出支援事業制度の見直し▽保育所運営経費の増加に伴う保育料見直し▽重度障害者医療費助成のあり方検討-と多岐にわたる。
福田市長は「受益と負担を見極め、しっかり方向性を出したい」とするが、市民の痛みを伴うだけに判断や手腕が試される。
臨海部の拠点化に意欲
川崎市の福田紀彦市長が19日で就任から丸2年となり、1期目の任期折り返しを迎える。17日までに神奈川新聞社のインタビューに応じ、待機児童解消の達成や中学校完全給食の2017年度実施決定などマニフェスト実現に自信をみせる一方、任期後半に向け新産業創出を目指す臨海部の拠点化やパラリンピックを生かした誰もが暮らしやすい社会づくりにも意欲を示した。
-2年間の自己評価は。
「評価は市民の皆さんにお任せしたい。私には市民に約束したマニフェストがあり、チェックされる緊張感を持つことが大事だと思う。重視してきたのは対話と現場主義。役所にこもらず、商店街や街の声に耳を傾けることを心掛けてきた。各区で開く区民車座集会も3巡目に入った」
-マニフェストの14テーマ26項目の進捗(しんちょく)状況は。
「中学校完全給食や待機児童の解消はめどがついた。地域のシニア世代が子どもの学習を支援する『地域の寺子屋』や要介護度の改善を図る『健幸福寿プロジェクト』、『習熟度別クラス』も進んでいる。課題は小学6年までの小児医療費助成の拡大だ。折り返し後の2年で頑張りたい」
-小学6年までの対象拡大は総合計画素案に「17年4月から」と明記したが、窓口での一部負担を検討するとも聞く。マニフェストで示す「無料化」と違うが。
「財政状況や頻回受診の問題も考える必要がある。また一定の負担があっても対象年齢は幅広くやってほしいという市民の声もある。ただ、その場合は公約の一部変更になるのでしっかり説明責任を果たしたい。マニフェストは一言一句変えないと意固地になり、それが目的化してはいけない。良い市民サービスを提供できるなら批判を浴びても一歩でも前に進めたい」
-任期後半にどう臨むか。
「これまで2年間に集中的に取り組んだ中学校完全給食や待機児童解消などは他都市に追いつかなければならない分野だった。これからは上のステージを目指し、社会変革を促す先導的な取り組みに力を入れる」
-具体的には。
「川崎は羽田空港の隣にあり、製造品出荷額が全国トップで、技術力の集積もある。殿町国際戦略拠点の研究機関や先端企業の集積がこの2年で一気に進む。その潜在力を引き出し、わが国の成長産業をリードするミッション(使命)を川崎が担いたい。市として総合的に見られるように庁内の体制整備も考える。また、20年東京五輪・パラリンピックに向け、健常者も高齢者も障害者も交ざり合ったバリアーがないユニバーサル社会をつくっていく。20年大会を意識しながらも、その先にある社会づくりのために『かわさきパラムーブメント』を進める」
-今月公表した行財政改革の計画素案で職員の意識改革など「質的改革」を重視した理由は。
「職員の削減が行革という感覚の人もいると思うが、そういう段階ではない。これまで市の行革は職員削減に目的があり、そこは一定程度達成できた。ぜい肉は落ちた。これから筋肉質にしていかなければ、市民サービスの提供に影響する。必要な削減はするが、中長期を見据え、限りある資源を最適なところに配分していくことが大事だ」
-計画素案では高齢者外出支援制度見直しや重度障害者医療費助成のあり方検討など市民サービスの見直しも多岐にわたる。
「全庁的な手数料、使用料が検討対象となる。受益者の受益と納税者の負担のバランスをあらゆる施策で見なければならない。例えば保育料。高いと思う方もいるが、保育料以外に保育所運営のためどれだけの税金が使われているかを『見える化』している。その上でどの水準が適切かを議論しなければ納得感がない。サービスの公益性を考えながら、それぞれ方向性を示していきたい」