横浜市で、生活保護費の不正受給者らから回収する返納金の収納率が年々低下している。受給世帯の増加に伴い不正受給などが増える一方、回収は分割となることが多いためだが、2012年度に37・6%だった収納率は13年度に32・7%、14年度には25・9%まで下がった。市の担当者は「不正受給の防止に取り組んでいるが、劇的に収納率を上げることは難しい」と頭を悩ませている。
市によると、返納金は2種類で、年金の受給権があることが判明したなどの悪質性のない「返還金」と、不正受給者らに対する「徴収金」がある。増加傾向にある市内の受給世帯数に比例して年々増加している。14年度の月平均被保護世帯数は5万2418世帯で、返納金の総額は約49億円。回収できたのは25・9%に当たる約12億円だった。
中でも不正受給に対する徴収金は収納率が低く、12年度15・6%、13年度11・9%、14年度8・8%と厳しい状況が続いている。
市が一括返納を求めても「金がない」などの理由から長期の分割納付にせざるを得ないケースが多く、結果として1回の納付額が少額となり収納率が低くなっているのが現状という。
また、所在不明で回収不能になってしまうケースもある。ある60代の男性は勤労収入があるのに病気で働けないとして生活保護を申請。09年6月から12年3月まで約2年9カ月間生活保護を受けたが、頻繁に家にいないことを不審に思った市職員の調査で不正受給が発覚。約500万円の徴収金を払わず行方をくらました。悪質と判断した市は詐欺罪で告訴したという。
市は「収入を得たら申告する」などの事前説明をより厳重に行っているほか、返還金と保護費とを相殺するなどして収納率の強化を図っているが、今後も低下は避けられないとみる。
返納金収納率の15年度の目標は23・5%。担当者は「14年度の25・9%よりも低い数字が目標なんてと言われるかもしれないが、本当に厳しい状況。不正受給の未然防止に全力で取り組み、少しでも改善につなげたい」と話している。