東海道新幹線の高架線が貫く寒川町北部の倉見地区を舞台にしたまちづくり「ツインシティ計画」が決まったのは、2000年にさかのぼる。相模川の対岸に当たる平塚市大神地区と新橋で結び、一体的な開発を進めて新幹線新駅を誘致する構想だ。
平塚側では土地区画整理組合の設立認可を申請中。橋の都市計画手続きも間もなく完了を予定している。だが、寒川側のまちづくりは足踏みが続く。先行して整備に着手する区域を設定し、県と費用負担を協議している段階で、事業手法も決まっていない。
「当時とは社会経済情勢も変わっている。見通しに問題はないのか」「厳しい経済情勢の中、住民に負担を与える。医療や介護、子育てにお金を投入するのも一案ではないか」-。
6月の町議会の一般質問では、事業をめぐる指摘が相次いだ。町側は「将来に向けた財産づくりと考えている。社会福祉充実のためにも、まちづくりで財源を確保しなければ」と、事業の意義を強調した。
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ツインシティ計画が進行すれば、町も多額の整備費負担を迫られる。
町は昨年度、3年ぶりに自治体の財源不足を補うため国が支給する地方交付税(普通交付税)の交付対象とならない「不交付団体」となった。とはいえ、財政基盤の強さを示す財政力指数は基準をわずかに上回る程度。本年度も不交付団体となったが「厳しい財政状況に変わりはない。毎年、予算編成に四苦八苦している」。町財政課の表情は厳しい。
町の予算規模は一般会計137億円と県内の町では最大。町税収入を支えるのは製造業だ。12年の経済センサス活動調査では、製造品出荷額は県内市町村で13位。生産年齢人口1人当たりの出荷額は中井町に次いで2位となっている。
こうした財政構造は景気動向に左右されやすいのと表裏でもある。リーマン・ショック後の10年度には法人関連税収が激減し、収支不足見込みは17億円弱に達した。大幅な緊縮型予算の編成を迫られ、既存事業の見直しや補助金・人件費カットも余儀なくされた。
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近年は景気回復を追い風に法人・個人町民税収は増加傾向。それでも財政調整基金の残高は8億円(14年度末)にとどまり、財政の硬直度を示す経常収支比率も96・8%(13年度決算)と高い。老朽化していく公共施設の維持補修費もかかるため、都市整備への投資余力には乏しい。
だが寒川町の将来を考えると手をこまねいてはいられない。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年に町の人口は現在から7千人減り、高齢化率も10ポイント上昇して34%となる予想だ。町は人口減対策の総合戦略を策定するため、今年6月に外部委員会を設けた。
町財政課は「数十年先を見据えた投資も必要だとは思う」。将来のまちづくりと人口減対策、財政力の確保-。難しい方程式が、町政運営の課題として待ち受ける。