
与党が今国会での成立を目指している安全保障関連法案をめぐり、県内33市町村議会のうち、5議会が「撤回」や「廃案」などを求める意見書を可決したことが10日、神奈川新聞社の取材で分かった。集団的自衛権の行使容認を含む同法案に「違憲」との指摘が相次いでいることを踏まえ、「事実上の改憲で立憲主義の否定」と批判する内容もあった。開会中の県議会でも「反対」の意見書を提出する動きがある。
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県内の市町村議会の安保法案に絡む対応は、10日までにすべて出そろった。本会議に意見書や請願が提出されたのは13議会。このうち安倍晋三首相や国会に「撤回」「廃案」を求める意見書はそれぞれ1議会、「慎重審議」を求める内容は3議会で可決した。全会一致はなかったが、自民党系会派の議員が賛成に回るケースもあった。いずれの議会も法案への「賛成」の意思表示はなかった。
「撤回」を求める意見書を可決したのは鎌倉市議会。衆院憲法審査会で3人の憲法学者全員が「違憲」としたことなどに触れ、「立法により事実上の改憲を行おうとする本法案は、立憲主義を否定する」と指摘。神奈川ネットワーク運動や無所属の市議らが提案し、自民党籍を持つ市議1人や民主、共産党などが賛成。反対を3票上回って可決(退席2)した。
葉山町議会は、法案を「日本を『海外で戦争する国』にする」とし、憲法9条の理念に反し到底容認できないなどと「廃案」を要求する意見書を可決。「慎重審議」を求める内容で可決した相模原、平塚市、中井町の3議会は、政府の説明が不十分とする世論調査結果などを踏まえ、今国会での成立を急がず国民が納得する丁寧な議論が必要とした。
葉山町議会の近藤昇一議長は「意見書の趣旨と同じ声を多く聞いており、町民の意思が反映されたと思う」と説明。平塚市議会の府川正明議長は「国政の問題でも、市議会が声を上げることは大事だ。国会は地方の声を重く受け止めてほしい」と述べた。
一方、小田原や大和市、寒川町など8議会でも「撤回」や「廃案」などを求める意見書が提出されたが、いずれも賛成少数で否決。ほかにも多くの議会に市民らから反対の意見書提出を求める請願や陳情が出されたものの、本会議には上程されなかった。
13日に閉会する県議会でも共産が「反対」の趣旨の意見書を出す方向で動いているが、現時点では否決される公算が大きい。
他県の議会では岩手が「反対」、長野や三重などが「慎重審議」、秋田と長崎、山口は今国会での成立に「賛成」の意見書を可決した。