羽田空港の発着便増加に向けた都心上空の飛行制限緩和案で川崎・殿町地区の上空で左右に旋回する飛行経路が示されたことについて、川崎市の福田紀彦市長は8日、国が臨海部から東京湾に抜ける左旋回ルート案に一本化したことを明らかにした。国土交通省は、市街地の騒音影響が広範囲に及ぶことを避けるのが理由としている。
同日の市議会本会議で、自民党の嶋崎嘉夫氏(川崎区)の一般質問に答えた。
国が昨年6月に示した飛行制限緩和案では、夕方の国際線発着ピーク時、南風時には羽田B滑走路から南西へ離陸させる案を提示。離陸機の飛行経路は、多摩川対岸の殿町地区上空で▽右に旋回し、川崎駅方向の市街地を通過するルート▽左に旋回し、臨海部から東京湾へ抜けるルート-の2案を示していた。だが、今年5月に国交省が市に説明した案は、左旋回ルートのみだったという。
福田市長は、左旋回ルートも殿町地区から石油コンビナート地域を低高度で飛行することを踏まえ、「騒音や振動、生活環境への影響、安全性に対する懸念など課題認識を持っている」と指摘。今後は「市民の意見や懸念を受け止めて市としての見解をまとめ、飛行ルート案を国に要望したい」と述べた。
国交省航空局は「あらゆる可能性を考えて2ルート案を提案していたが、騒音などの影響がより少ない海上を通過するルートが基本的な考え」としている。地元町内会への説明は済ませており、今後は羽田空港機能強化に関するより多くの市民を対象にした説明会を実施する。川崎市内では7月26~29日にミューザ川崎、8月2~4日に川崎区役所大師支所で開催する。