
横浜市は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を市内に誘致した場合の影響などを調査した報告をまとめた。IR建設だけで約3900億円、開業後の売り上げ、観光消費では年約4100億円の経済効果が生まれると試算している。
調査は市が2014年度予算に約1千万円を計上し、民間シンクタンク「日本経済研究所」(東京都)に委託して行った。
報告書によると、外国の主なIR施設を参考に延べ床面積を50万平方メートルと仮定した場合、建設中だけで3922億円の経済効果があり、約3万1千人の雇用が生まれると算出。約55億円の税収があるとしている。
また、横浜にIRを誘致した場合のカジノ来訪者数を推計。国内客約567万人、海外客は約142万人になるとした。
この来訪者数を前提として、IR売り上げや観光消費によって市内全体で毎年4144億円の経済効果があると試算。就業者は約4万1千人増え、税収も毎年約61億円を見込んだ。
市内経済界などは誘致先として中区の山下ふ頭(約47ヘクタール)を掲げているが、報告書では羽田空港からの近さや鉄道網の充実といった交通アクセス、港が一望できるロケーションの良さ、国際会議場などがあることが有利とし、「都心臨海部に立地することが最適」と指摘した。
IRが横浜の都市ブランドに新たな付加価値を生む可能性を秘めており、あらゆる層を楽しませる滞在型リゾートを目指すべきと言及。箱根や鎌倉をはじめ、関東全域への観光波及効果もあるとした。
一方、懸念事項としてギャンブル依存症や暴力団の関与、マネーロンダリング(資金洗浄)などを挙げ、諸外国の対策を例示。対策に取り組んだシンガポールの事例を参考にするべきだと明示した。
自民党と維新の党、次世代の党は4月28日にIR整備推進法案を衆院に再提出、今国会での成立を目指している。林文子市長はこれまで「魅力と活力あふれる都心臨海部を実現させるために有力な手法」と発言するなど誘致に前向きな姿勢を見せている。
今回はIRに関する基礎的な調査で今後、法案が国会を通った際に市としての判断材料にするという。15年度も調査を行う予定。