
「市民に喜んでいただけるよう、安全安心なまちづくりをしっかりと進めていかなければいけないと認識を新たにした」。14日、相模原市長選の当選証書を付与された加山俊夫氏(70)は3期目の始動に向けて、こう決意を語った。
当選から一夜明けた13日の記者会見では、選挙中に掲げた「マニフェスト」6項目をあらためて説明。「暮らしの満足度を高めるまちづくりを進めていきたい」と、暮らしに直結する施策などの取り組みについて熱く語った。
「市政にどのようなことを望むか」-。神奈川新聞社などが実施した選挙期間中の世論調査によると、1位だったのは「子育て支援」で、半数以上の割合を占めた。選挙戦で加山氏が強調した「企業誘致」などが2割前後だったのに比べ、身近な生活に満足度を求めている市民像が明らかになった。
市の人口推計を見ても、2019年の約73万人をピークに減少に転じ、60年にはピーク時の4分の3程度の約54万人にまで減るとされている。人口増加へ、子育て支援や働く女性の応援は市の喫緊の課題でもある。
その施策の一つとして示したのが、小児医療費助成制度の拡充だ。今月から、通院医療費の無料化対象を3学年引き上げて小学6年生までにしたばかり。これを「3期目の任期中に、さらに義務教育期間の中学3年生まで拡充させる」と街頭演説でぶち上げた。これまで記者会見でも「できるだけ早い時期に拡充」と述べていたが、時期を示したことはなく、“サプライズ”の公約披露となった。
市は助成対象を小学6年生まで拡大したことで、15年度の受給対象者は1万4千人増えて6万4千人、助成額は4億円増の22億円を見込む。仮に中学3年生まで引き上げた場合、対象者はさらに1万3千人増の7万7千人、助成額も3億円増えて25億円に膨れ上がる。
それにとどまらず専任教諭を小学校全校に配置することや、保育所の待機児童の解消、市民の医療負担の軽減などまで公約した。
今回選挙の争点として広域交流拠点整備がクローズアップされたが、期間中「人に、企業に選ばれる市に」と訴えていた加山氏は3選を果たした今、「同時進行ですべてに力を注ぐ」と強調する。
ただ、すべてを実現するには財源の問題がある。
加山氏は前回選挙で、特別養護老人ホーム入所待機者の解消や救急体制の充実など多くの項目に数値目標を設けたマニフェストを掲げ、外部評価では主要施策13項目の達成度は90%と高い結果だった。しかし今回のマニフェストには数値目標は見当たらず、「推進」「充実」などの言葉が並んだ。内容は盛りだくさんだが、3期目の政策の実現性を計るものさしは、ほとんどない。
市政に求める市民ニーズに限りはなく、その他の部分とバランスを取るのは難しい。公約実現へどう財源を確保していくのか、あるいは取捨選択となるのか、今後の市政運営の手腕が問われる。