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安倍政治を問う〈14〉「マニフェスト」は今

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年12月18日(木) 18:00

北川正恭さん
北川正恭さん

民主党政権の失敗から今回の衆院選ではマニフェスト(政権公約)に対する有権者の期待や信頼が薄れ、候補者側も政策の実現の見通しや財源を明確にしない公約が目立った。マニフェスト後退の流れをどう見るか。提唱者の一人である早稲田大大学院の北川正恭教授(70)に聞いた。

今回の選挙は安倍総理の作戦勝ちに見えるが、長期的に見れば本当に勝利と言えるかは分からない。

総選挙は基本的には4年の任期を全うすることを前提に公約を掲げ、約束を果たすために任期いっぱい最大の努力をした上で、有権者に信を問うべきものだ。成熟国家である日本の総理ならば、正々堂々と王道を歩むべきだった。

衆院の解散は総理の専権事項ではあるが、自分の都合の良いときに解散して政局運営をするようでは、政治全体が信頼を失う。

総理が解散という伝家の宝刀を抜くときは、有権者に問題提起をし、世の中を変えるというワクワク感や、共感の渦が巻き起こらなければならない。

しかし今回の解散にはなかった。戦後最低の投票率がそれを表している。大多数が消費増税延期はやむなしと思っている中で、総理がこれが争点だと声を張り上げているのは、むなしく響いた。

この選挙が、国民の政治不信に拍車を掛けるのではないかと懸念している。

安倍総理は2年前の国会の党首討論で、国会の定数削減についてあれほどはっきりと実行を約束したのに、不履行のまま選挙を実施した。経済政策として前面に掲げる「アベノミクス」でも、2年間で物価を2%上昇させるという目標は、まだ達成していない。

国権の最高機関である国会という場での約束を平気で破り、果たそうという覚悟も見られないのは大きな問題だ。

国民の間には、ある種の失望感が広がっている。今後の政権運営にも影響を与える可能性がある。

■怠 慢

不意打ち解散で、民主党をはじめ各野党が対案としての政策を出せなかったのは、全くの怠慢だ。

日本のマニフェスト選挙は発展途上にあり、さまざまな条件が整わないと機能しない。

マニフェストは政党が有権者に対し、政権を取った場合について約束するもので、数値を伴い、事後検証が可能だ。選挙で示し、与党は約束を果たすべく努力する。次回選挙時には検証し、与党は実績を、野党は改善策を有権者に示して選んでもらう。

しかし、日本ではまだそのサイクルを支える政党が成熟していない。

政党は欧米のように政策シンクタンクを持ち、平時から政策や公約を練る努力が必要だ。日本は5年前の政権交代選挙後に、自民と民主の二大政党がシンクタンクを解体したのは大きな問題だ。各政党は次の選挙に向けて、すぐにでも政権公約作りに着手する必要がある。

小渕優子前経済産業相の個人後援会のスキャンダルをはじめ、政治資金の問題がまだ相次いでいる。日本の選挙のあり方はまだ地縁や血縁に頼り、本来の民主主義へと脱皮していない。政党は本来は人材の発掘から育成、スクリーニングまで責任を負わなければならないが、日本ではできていない。

これらさまざまな条件が整わないため、マニフェスト型選挙の態勢も不十分だったというのが、今回の選挙でも露呈した課題だ。マニフェストの提唱者の一人として、私自身にも反省はある。

政治行政の役割が「富の分配」にあった高度経済成長期は、有権者も白紙委任で済んだ。選挙公約は破られるためにある選挙までの約束だった。ゼロ成長時代に入り、「負担の分配」が始まるとそうはいかなくなってきた。

破られる約束の下に選ばれた政治家が信頼されるわけがない。先進国家としてぼちぼち本気で変わらなければと、みんな思っているはずだ。

■好 機

国政では後退した感のあるマニフェスト選挙だが、来年の統一地方選で復活させようと力を入れている。

ここ数年、地方選挙はマニフェストと相性がよい。地方選挙で首長や議員が示す公約は、住民にとって身近な課題ばかりだ。近所に保育園が新設されたか、通学路の安全対策は進んだかなど、住民が公約の達成度を自分の目で検証できるからだ。

マニフェスト選挙は、公約をいつでも検索できるインターネットと親和性が高く、統一地方選でのネット選挙解禁も好機だ。

くしくも今年は、東京都議会でのセクハラやじや、政務活動費問題で号泣会見を開いた元兵庫県議などの話題で、地方議会に注目が集まった。結果的に地方議会のあり方や役割に関心が高まり、有権者の目が厳しくなっている。

このチャンスをとらえて、統一地方選を政策中心の選挙に変えたい。

所長を務める早稲田大マニフェスト研究所では、地方議会や議会事務局を対象に、議員提案条例の勉強会を開くなどして、マニフェスト選挙を啓蒙している。

審査委員長を務めている「マニフェスト大賞」は年々応募が増え、9回目の今年は全国の首長・議会・市民から過去最高の2223件の応募があった。マニフェストは死んでいない。

地方議会が変われば、地方自治体や首長が変わり、そうすれば国会議員や中央官僚も変わらざるを得なくなるだろう。

マニフェスト選挙で、地方議会から国を変えたい。

○きたがわ・まさやす

早稲田大政治経済学術院教授。衆院議員、三重県知事などを歴任。政権公約「マニフェスト」を提唱、日本に広めた

【神奈川新聞】

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