国の進路を決める衆院選でありながら、有権者のおよそ2人に1人が投票に参加しない。選挙をめぐる経緯が無関心を募らせたのなら、立法府にとって憂慮すべき事態だ。
県内の確定投票率は53・88%にとどまり、戦後最低を記録した。自民党総裁の安倍晋三首相は15日の会見で「国民の1票が日本をつくると訴え続けなければならない」と述べ、政治の信頼回復が必要と強調した。
投票全体が低調に終わるなか、自民党候補が県内の各小選挙区で獲得した票の総数は今回、185万票に達し、2012年前回総選挙での176万票を上回った。比例代表の得票数も前回から伸ばした。
一方で、不意を突かれた解散により、選挙準備の整っていなかった野党は守りに入ることを余儀なくされた。安倍首相はサッチャー元英首相よろしく「この道しかない」と訴えたが、1票がもたらす将来を自身に引き付けて考えることが困難だった有権者が多かったのも一面の事実ではないか。
衆院解散は首相の専権事項ではある。だが世界を見渡せば、11年に議会任期固定法を制定した英国のように、任期満了を伴わない下院の総選挙に条件を課している例もある。政治的な意図が込められた解散権の行使が乱発されれば、有権者の政治不信は募っていくだろう。
一方の野党も、再生への視界が開けていない状況を、あらためて有権者に見せつけることになったと言わざるを得ない。
野党第1党の民主党が県内の各小選挙区で獲得した票は62万票余りにとどまり、政権を失った前回の得票数である83万票から20万票も減らしている。維新の党や次世代の党の得票数も、みんなの党や日本維新の会が「第三極」として集めた前回の票数には遠く及ばない。
小選挙区で勝利できず、比例復活もできずに落選した民主党の海江田万里氏は、代表辞任を正式に表明した。会見で海江田氏は「政権選択の選挙にならなかった」と述べ、低調な選挙ムードを変えられなかったことへの反省を見せた。
野党は、再編を含めた出直しの道を真剣に探らなければならない。与党との対立軸を明確にし、現政権への批判を抱く有権者に選択肢を示すために力を注ぐべきだ。でなければ政治不信の増大に加担していると受け取られても仕方あるまい。
【神奈川新聞】