突発選挙となった師走の総選挙は13日、立候補者がそれぞれ街頭などで最後の訴えに声をからした。激戦が見込まれる選挙区には党を代表する若手の人気応援弁士が駆け付け、ぎりぎりまで火花を散らした。片や、自民党の地盤が強い選挙区では有権者の盛り上がりはいまひとつ。冬の寒空に漂う熱気は「まだら模様」を描いたまま、戦いを終えた。
13日午後3時半すぎ。向ケ丘遊園駅南口(川崎市多摩区)。中高生らも含む大勢の聴衆が選挙カーの周りに集まった。
姿を見せたのは、全国各地を飛び回る自民の若きホープ、小泉進次郎氏だ。
ここ9区は、2012年の前回選挙で逆風の中、民主党が唯一小選挙区で議席を勝ち取った。今回も自民と民主の前職が一進一退の攻防を繰り広げる。民主の牙城を突き崩そうと最後の後押しを託された格好だ。
「今の選挙、間違いなく前回と前々回よりも盛り上がりに欠けてます。私はそれでも投票に行ってもらいたい。私たちの世代で、時間がかかっても、諦めないで政治の信頼を高めていきたい」
歯切れ良い弁舌に聴衆は沸き、演説後は車で移動する小泉氏を後追いする人が続出した。
その3時間前の新百合ケ丘駅南口(同市麻生区)。同じ9区に民主の論客で、高い人気を誇る細野豪志氏の姿があった。子連れの若い母親ら大勢に取り囲まれ、熱弁を振るった。
「安倍さんから経済政策や安全保障は耳にたこができるくらい聞いた。でも社会保障の充実を聞いたことはありますか。ないですよ。安倍さんの周りにそういう経済状況の人がいないんです。だから声なき声を託していただけませんか」
聴衆はうなずき、盛んな拍手が起きた。
2氏は次の激戦地16区へ。前回、民主が惜敗したものの、比例復活を果たした唯一の地だ。
日の暮れ始めた午後4時すぎ。小田急相模原駅北口(相模原市南区)。細野氏は最終盤に一層声を張り上げた。
「自民に衆議院の3分の2、317議席を与えたら、われわれは手も足も出ない。公明党も野党もブレーキにならない」
演説後は、細野氏に握手を求めたり、携帯カメラで写真を撮ったりする高齢女性の姿が目についた。
日も落ちた午後5時前。本厚木駅前(厚木市)。小泉氏はつぶれた声を振り絞った。
「私は将来を悲観していない。高度成長、バブル景気を知らない世代だから、現状に課題があるのは当たり前。われわれの世代にはどう課題を解決するかという発想がある」
女性や若い年代も目立ち、陣営は「最強の助っ人」と、最終日の盛り上がりを喜んだ。
熱を帯びた選挙区があった一方、自民優勢が終始伝えられたのが2、11、13、15区。特に15区は前回に続き、民主や第三極の候補者がいない。前回は県内で投票率が最も低い56・94%で、無効票も1万9133票で最多だった。
午後7時。平塚駅前(平塚市)。今回は共産党と無所属の候補と戦う自民前職が「前回より1票でも多く上積みしたい」と投票を呼び掛けた。
傍らを通り過ぎた60代男性は「自民は支持するが今回は棄権する。行かなくても決まりだよ」。30代女性も「今回も投票に行かない。つまらない」と話した。
午後8時。12日間の選挙戦に幕が下りた。
【神奈川新聞】