たすきを掛けた前横浜市長の隣で、前知事が応援のマイクを握る。「中田さんと松沢は一緒になって、新しいことをやってきた。改革を日本中に広げていきたい」。6日、溝の口駅前。かつての「神奈川の顔」が、寒風吹きすさぶ街頭に並び支持を訴えた。
5年前まで全国最大市のトップを務め、メディアへの露出も多い次世代・中田。かつての地盤に戻り、直前に合流した副党首・松沢成文の支援も受けて戦う。知名度に勝る“メジャー級”の出現で、18区の構図は前回までと一変した。
「神奈川都民」が多く、永田町の動きに敏感な有権者も多いとされるエリア。過去4度の選挙は自民、民主がオセロのごとく議席を奪い合ってきた。だが今回、民主は地元市議らの強い要請があったにもかかわらず候補擁立を見送り、2003年の同区新設後初めて「空白区」とした。
「維新、みんなと関係の深い地方議員が私を支援してくれる態勢はできた。第三極を貫きたい」。首相が解散を表明した前日の11月17日、中田はこう力説していた。間を置かずして、みんなは解党を決定。前回4万票余りを獲得しながら落選した会社社長は同25日、「後ろ盾を失った」として出馬を取りやめた。
シナリオ通り-のはずだった。だが同日、維新が北村を公認。北村は「ここは政治のプロばかり。肩書では見劣りするが、サラリーマン目線で政治を語りたい」。立場の違いを鮮明にした。
中央の急な決定に、すでに中田支援の意向を示していた維新の県議2人が離反。中田は「(維新には)野党再編への思いが、みじんもないんじゃないか」と、怒りを抑えるように首をかしげた。
返り咲きを期す生活・樋高は言う。「有権者の思いを死票にしないためにも、野党が足を引っ張り合っている場合じゃない」。後援会から授けられたキャッチフレーズ「反自民勢力の結集軸」を連呼し、選挙戦の軌道修正を促そうとする。
存在感を示そうと懸命な「第三極」。受けて立つ自民・山際の陣営も中田の国替えを警戒していた。公示前、独自に候補予定者の「知名度調査」を実施。選挙区全域で中田にリードを許すなど、厳しい結果に危機感を募らせてもいた。
それでも、山際は一人わが道を行く構えだ。「市長や知事と違い、国政はチームで取り組むもの。誰が相手かで訴えを変えるほど、自分自身は器用じゃない」。2年間、アベノミクス推進の最前線で汗してきた実績を強調する。
混沌とした情勢に埋没しないよう、共産・塩田は独自色を発揮。「選挙は政(まつりごと)だから、お祭り」。街頭でギターの演奏を披露し、選挙ポスターに帽子姿で登場するなど異彩を放つ。
自民に抗する野党が互いに競り合う風景。「1強多弱」と揶揄される永田町の縮図を、くっきりと映し出しているようでもある。 =敬称略
◇18区(川崎市高津・宮前区、中原区の一部) =敬称略、届け出順
北村 造31☆維新
樋高 剛49☆生元(3)
塩田 儀夫64 共新
山際大志郎46☆自前(3)
中田 宏50☆次前(4)
【名簿の見方】氏名、投票日現在の満年齢、☆は比例代表との重複立候補者、前職・元職・新人の別。丸数字は当選回数▽党派の略称は、自=自民党、維=維新の党、次=次世代の党、共=共産党、生=生活の党。
【神奈川新聞】