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「特別秘書」取り下げ 成立めど立たず 川崎市長

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年9月2日(火) 03:00

開会した定例会に出席した福田市長=川崎市議会
開会した定例会に出席した福田市長=川崎市議会

川崎市の福田紀彦市長は1日、市議会第3回定例会に提案予定だった「特別秘書」の設置条例案を取り下げると表明した。議会側の反発が強く議案成立の見通しが立たないと判断し、今定例会への提案を断念。福田市長は「制度の必要性は理解いただいていると思うが、タイミングにいろいろな意見があったことも鑑みて取り下げた」と述べ、次期定例会以降に再提案する意向を示した。

福田市長は8月25日に同条例案の提案方針を表明した際、主に政治色の強い公務を担う特別秘書について「施策実現に向け政財界などとの折衝や調整をより強力に行う必要性を感じてきた」などと説明。しかし、議会側には▽提案が唐突▽行財政改革に逆行▽人選への懸念-といった拒否反応が強まっていた。市長側は可決は厳しい情勢とみて、議会開会前日の同31日に取り下げを決断した。

福田市長は「残念だが、必要性は感じている。仕切り直してしかるべきタイミングで出したい」と説明。条例案の内容については、「今のところ変える必要性は感じていない」との認識を示した。

市議会の浅野文直議長は「今後の議会との関係も考慮され、総合的に検討された結論だと思う。今後も議会と市長がよい意味での緊張感を持ちながら市民のために議論を進めていければ」とコメントした。

提案予定だった条例案は特別職として特別秘書を設置する内容で、定数2人以内で任期は1年。年収は部長級を参考に最大約1100万円としていた。

◆議会側の反発強く市長選しこりも

「十分なご理解を得られない状況であることから、議会との関係や今後の市政運営に配慮し取り下げさせていただきました」

川崎市議会定例会が開会した1日の本会議場。福田紀彦市長は提案説明の最後に特別秘書設置条例案を取り下げる方針を説明し、厳しい表情を浮かべた。条例案告示から1週間での取り下げという前例のない事態。市議からは「お粗末」との声が上がった。

■自民の動向影響

特別秘書をめぐり、口火を切ったのは同市議会の浅野文直議長だった。「制度は必要だと思うが、認めてしまえば誰でも彼でも市長が任命できる怖さを持っている」とけん制。多くの市議から「なぜこのタイミングなのか」「行財政改革に逆行する」との声が上がる議会内の“空気”を代弁し、「簡単に通る雰囲気でない」との見方を示していた。

最も影響したのは、60人いる市議会の最大会派・自民党市議団(16人)の動向だ。石田康博団長によると、議案への対応を検討した団会議は反対意見が大勢を占め、賛成はごく少数。公明、民主の両市議団は姿勢を明確にしていなかったものの、自民の動向が影響するのは必至で、否決の可能性が濃厚となっていた。

こうした情勢を読み取った市長サイドは「(反対は)制度論ではないと感じた。市民生活に直結しているものではないので無理に今の時期でなくてもいいと判断した」と取り下げを決めたという。

■ボタン掛け違い

根底にあるのは昨秋の市長選だ。自民、公明、民主、共産といった主要会派はいずれも福田市長の対立候補を支援して敗れ、議会内には少なからずしこりが残っていた。

特別秘書設置について福田市長は「そもそも政治的なものとの認識がない。市政運営上、最も効率的、効果的な組織をつくるだけ」と説明していた。だが、市議の大半は「政治的案件そのもの」との認識で、ボタンの掛け違いも市長にとっては誤算だった。しかも「市長選から1年もたたないうちに」と感情的な部分も見誤った格好だ。

市長と議会の関係について、ベテラン市議は言う。「この9カ月間、(全て議案を通した)『川崎の議会はおとなしい』と市長に思われ、こうした重要な議案を出してきたのであれば、議会側もカチンとくる」

一方ある市議は、福田市長がかつて秘書として仕えた松沢成文前知事が同種条例案を県議会に否決されたことを引き合いに、「そういう意味では(失敗を)学んでいるのではないか」と、強行突破を見送った姿勢を評価した。

【神奈川新聞】

 
 

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