
江戸時代初期の小田原藩主稲葉氏や、三代将軍・徳川家光の乳母として知られる春日局らの墓や供養塔がある小田原市指定文化財「稲葉一族の墓所」(同市入生田)が倒木により破損していたことが23日、明らかになった。市の発表などによると、10日ごろに日本列島を通過した台風8号や、その後の大雨による影響とみられるが、復旧のめどは立っていない。
墓所は、稲葉氏一族の菩提(ぼだい)寺で、毎年春には市の天然記念物「長興山のしだれ桜」を目当てに多くの観光客が訪れる長興山紹太寺の山林にある。本堂から500メートルほど離れている。
市文化財課や同寺によると、21日夕に付近住民から倒木について同寺に伝えられ、状況を確認した寺側が22日に同課に連絡した。
墓所に向かって右側の斜面から高さ15メートル、幹回り3~4メートル程度のスダジイの大木が根元から倒れ、横一列に並ぶ8基の墓石のうち7基に覆いかぶさっていた。一部の墓石は崩れたり、欠損したりしている。
倒れた日時は不明だが、武内徳昭住職(47)は「ハイキング客や檀家(だんか)さんから連絡はなかったので、1週間以内の出来事ではないか」と推測する。
同寺を創建したのは春日局の孫で、幕府の老中を務めた稲葉正則(1623~96年)。墓所は寺が創建された69年前後のものとみられる。正則や春日局をはじめ、正則の父正勝らの墓や供養塔があり、1961年に市指定文化財(史跡)となった。
現地は立ち入り禁止の措置を取り、同寺は市などと協議しながら復旧に向けた準備を進めている。武内住職は「350年ほどの歴史がある墓所で、被害状況を見てぼうぜんとした。復旧のめどは立っていないが、一日も早く復旧させ、墓前祭などを行いたい」と話している。
【神奈川新聞】
