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集団的自衛権を考える(22)首相発言を検証(上) 「変わらない」に違和感

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年7月4日(金) 03:30

安倍政権は憲法解釈を変更し、戦後一貫して禁じられてきた集団的自衛権の行使容認に転じた。海外での戦争に道を開く大転換だが、会見に立った安倍晋三首相は「日本が再び戦争をする国になることはあり得ない」と力説した。識者に発言を検証してもらうと「従来と変わらない」と繰り返すことへ違和感が浮かび上がってくる。

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「海外で突然紛争が発生し、そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が救助輸送している時、日本近海において攻撃を受けるかもしれない。わが国自身への攻撃ではない。しかし、それでも日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにするのが今回の閣議決定だ」

■元内閣官房副長官補・柳沢協二さん 安倍首相が想定しているケースなら、集団的自衛権行使は必要はない。自国を守る個別的自衛権で対応できる。それは防衛官僚の常識だ。

1997年に改訂された日米防衛協力のガイドラインに、民間人の脱出には、それぞれの国が基本的に責任を持ってやることが定められている。

有事の場合、外国にいる日本人は民間機が飛んでいるうちに、帰ってきてもらうのが鉄則。残る邦人は自衛隊が運ぶことになる。

万が一、米国の船が日本人を運んでいるケースがあれば、乗っている日本人を守るのは当然で、これは警察権や個別的自衛権で対応できる。つまり、集団的自衛権は必要ない。

新しい自衛権の発動要件を「他国への武力攻撃で国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」としているが、米国の船が攻撃されたことで、日本の存立が脅かされるとは思えない。行使が必要だというなら、もっと現実的な想定を示すべきだ。

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「現行の憲法解釈の基本的考え方は今回の閣議決定においても何ら変わることはあり得ない。海外派兵は、一般に許されないという従来の原則も全く変わらない」

■元内閣法制局長官・阪田雅裕さん 歴代政権は、憲法9条があるので海外派兵は「絶対に」許されないとしてきた。これが「一般に」許されないという文言になっている。これは従来の原則ではない。

「一般に」という解釈であるのなら、それ自体が安全保障政策の大転換を意味する。

そもそも集団的自衛権の行使はどの国も慎重になる。「いつでもどこでも派兵できます」という国はない。多くの国は海外派兵は「一般にしない」としている。実際、フランスはイラク戦争に派兵していない。

集団的自衛権が必要だと考えているのなら、はっきりと「外国の戦争に加わることが日本にとって必要だ」と主張すべきだ。「必要だが、9条があるのでできない。だから憲法改正が必要だ」という議論の立て方をするべきだ。国民の理解が得られず、改正が無理だと分かっているから、そうしないのだろう。

「武力行使が許されるのは、自衛のための最小限度でなければならない。このような従来の憲法解釈の基本的考え方は何ら変わらない」

集団的自衛権に一歩踏み込むとすべてが変わる。9条に基づいた平和主義を手放すことになるからだ。限定的な行使を主張するのはナンセンスだ。

政府は「一般的な集団的な自衛権行使を100だとすると、日本は5くらいしか行使しない」と説明したいようだ。最小限で、限定的だから問題は少ない、と。だが、そこに歯止めは存在しない。

ちょっとだけ武力行使し、途中でやめるということは現実的ではないからだ。交戦当事国になれば日本本土が攻撃され、全面戦争になりかねない。

イラクやアフガンでの戦争も、各国は当初、必要最小限度の武力行使を想定していた。泥沼化していったベトナム戦争もそうだった。

5くらいなら容認してもよい、と受け止める人もいるかもしれないが、集団的自衛権の行使を容認するということは量の問題ではなく、「オール・オア・ナッシング」という質の問題だということを理解すべきだ。

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「万全の備えをすること自体が日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持っている。これが抑止力だ。今回の閣議決定によって、日本が戦争に巻き込まれる恐れはいっそうなくなっていく」

■軍事ジャーナリスト・前田哲男さん 軍事力を強め、精強な軍隊を誇示、断固たる決意を示し、相手をひるませ、侵略の意図をくじくというのは、確かに軍事的な考え方の一つ。それはしかし、古典的な方法だ。

現在、多くの国は周辺諸国との信頼を醸成することで紛争を防ぐ努力をしている。欧州連合(EU)は共通の外交、安保戦略を持つ。東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国も共通の安全保障を目指している。

対話を重ね、軍縮を進めていく。東アジアでそうした道を模索することもできるはずだ。日本は多くの国が目指している方向、世界の潮流から、逆に進んでいる。

「日本を取り巻く世界情勢はいっそう厳しさを増している。あらゆる事態を想定して、国民の命と平和な暮らしを守るため、切れ目のない安全保障法制を整備する必要がある」

これは中国や北朝鮮を意識しているのだろう。世界情勢の厳しさを理由に、断固たる決意を周辺国に示すことは、挑発や威嚇、脅威と受け止められる可能性がある。相手は軍事力をさらに強め、いつでも戦える準備をする。すると軍拡が進み、一触即発となる。思いがけない形で衝突が起これば、全面戦争につながりかねない。

100年前の6月28日、オーストリア皇太子夫妻がセルビア人青年に暗殺された「サラエボ事件」が第1次世界大戦のきっかけとなった。事件自体はテロだが、地域紛争から、大陸紛争、世界大戦に拡大していった。各国が「同盟国だから」という理由で参戦し、戦闘は拡大していった。同盟が抑止ではなく戦争の拡大につながった。

過去の歴史を学べば、集団的自衛権の行使は戦争の抑止ではなく、軍拡や衝突に結びついていくことが分かる。

【神奈川新聞】

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