安倍政権が憲法解釈の変更によって目指す集団的自衛権の行使容認について、反対や慎重な対応を求める意見書を可決する県内の地方議会がじわり増えている。これまでの座間、大和、葉山の2市1町に加え、6月定例会で新たに小田原、三浦市と大磯町が可決。閣議決定をめぐる自民、公明の与党協議が大詰めを迎える中、解釈改憲への異議や拙速さをいさめる声が保守系議員からも上がり始めた。
◆小田原など可決 保守系議員も危惧
小田原市は19日の本会議で「慎重な審議を求める意見書」を賛成多数で可決した。集団的自衛権の行使容認の憲法9条との整合性を問題点に挙げ、「議論を尽くすとともに立憲主義を堅持することを強く求める」として公明党会派など8人が提案したもの。公明党会派の今村洋一代表は「報道各社の世論調査の結果を見ても賛否はまちまちで、国民の理解が進んでいない」と指摘する。
16日に三浦市が可決した意見書では集団的自衛権の行使を解釈改憲により認めることについて、「日本の『自衛』とは無関係で、なおかつ海外で戦争をする国となる」と記述している。賛成した石原正宣市議は保守系会派のみうら市政会の所属。「集団的自衛権の解釈が幅広く、戦争に行く可能性が危惧される」とした上で「憲法改正の手続きを踏むべきで、今の流れは急ぎすぎ。保革、党派を問わず、立憲主義に関わる問題なので賛成した」と話す。
昨年12月と今年3月の定例会でそれぞれ意見書を可決した座間、大和の両市は在日米軍基地を抱えるだけに危機感が強かったが、大磯町の渡辺順子町議(無所属)も、より根本的な問題として捉える。解釈改憲という手法自体、国家権力の行使を憲法が縛る立憲主義に反すると批判。意見書賛成に込めた思いを「未来の人、子どもたちが将来、巻き込まれる問題でもあり、地方から声を上げ、中央の政府に歯止めをかけたい」と強調する。
各議会には市民団体などからの陳情が相次いでおり、本会議が続く自治体では閉会までに意見書が提案される可能性もある。
藤沢市議会では20日、慎重な審議を求める意見書が出される。市民の陳情を受けたもので、13日の市議会総務常任委員会では全会一致で可決されている。この結果について、自民系の自由松風会に所属する加藤一総務委員長は「国の根幹に関わることなので、慎重にやってほしいという市民の意見は当然ではないか」と話している。
【神奈川新聞】