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集団的自衛権を考える(11)国民安保法制懇メンバーは語る(下)

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年6月1日(日) 13:56

小林節・慶応大名誉教授
小林節・慶応大名誉教授

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する憲法学者や元政府関係者で結成した「国民安保法制懇」。発足会見に臨んだメンバーからは、有識者でつくる「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が安倍晋三首相に提出した報告書への批判が相次いだ。

■国民素通りを宣言 小林節・慶応大名誉教授

私は改憲論者。憲法をいたずらに変えたいのではない。国際社会の一員の責任として9条を改正し、できることとできないことを明確にするべきだと考えるからだ。

いま結論がはっきりしているのは、9条は少なくとも海外派兵は許していないということだ。集団的自衛権は同盟国のために海外へ飛んで行き、戦争に参加するものだから、単純明快な憲法違反だ。

いわゆる有識者懇談会なるものを使う戦略手法がけしからん。本来政治とは主権者である国民から選ばれた政治家が責任を持って決めるものだ。そのために世界一のシンクタンク、官僚機構があるわけで、そこから情報を得て堂々と議論して決めればよい。

官僚の作文をぽんと渡す儀式があり、結果責任をとるべき政治家が、だって有識者の皆さんがおっしゃってますからと権威付けし、国民を素通りして、国会は単なる数合わせの儀式で終わる。これはもう民主主義が壊れている。

安保法制懇の報告書を読んで驚いた。憲法が安全保障について何も語っていないので、あとは内閣が国会と相談して決めるんだと読める。

(安倍首相は「実際に武力行使するかどうかは高度な政治判断。内閣が総合的に判断し慎重に決断する」と言っているが)いちいち判断するということは、条文的にいえば法的な規制は存在しないと言っているに等しい。決定権者にフリーハンドを与えるということにしか聞こえない。分かりやすく言えば、安倍首相が「俺に任せられているのだ」と宣言したと取るしかないと思う。

仲間とともに戦う集団的自衛権を解禁したら、いつも行くことになる。言い訳しても、筋が通らない。どうしてもやる必要があるなら個別的自衛権で進めるべきで、憲法解釈を変更することはない。議論が短絡している。

■米国の要請拒めず 孫崎享・元外務省国際情報局長

安倍首相は邦人の保護を集団的自衛権の議論の前面に出している。イラクやイランなどで仕事をしてきたが、邦人の逃避で米軍機や艦船が助けに来るシナリオはどんな大使館も持っていないはず。邦人保護をこの問題で出してくるのはすり替えだ。

集団的自衛権は国際的に認められているといわれているが、安倍政権が考える集団的自衛権と国連憲章のそれはかなり性質が違う。国連憲章は全ての国際紛争を平和的手段によって解決しなければならないとの前提に立っている。

いま議論されている集団的自衛権は基本的には米軍の傭兵(ようへい)になるシステムだ。安倍首相は国民の命を守る責任があると言っているが、国民の安全に貢献するかは疑問だ。テロとの戦いに全面的に入っていけば相手国は報復する。海外の邦人の生命のリスクも大幅に高まる。

なぜ容認を急ぐのか。それは米国の要請があるからだ。日米両政府は2005年に「日米同盟・未来のための変革と再編」という文書に同意したが、ここでは地域・世界における共通の戦略目的を達成するため、国際的な安全保障環境を改善する上で2国間協力は重要になったと言っている。

つまり、将来は行動するということ。イラク戦争やアフガニスタン戦争のようなものは共通の戦略目的になっていくから、現実の政治の世界、外交の世界では必ず米国の求めるものを受け入れざるを得ない。

いまは枠組みがないから受け入れない。つまり、従来の過去の首相を見れば「日本は9条があるから行けないんだ」ということだった。解釈を変更し、法的な整備により集団的自衛権が行使できるようになった時、日本政府にどこまで抵抗力があるかというと、私は抵抗力ゼロの政府だと思っている。

■容認の結論ありき 大森政輔・元内閣法制局長官

安保法制懇の報告書は首相の希望する結論が先にあり、それを導くための理由付けというひどいものだ。牽強付会(けんきょうふかい)という言葉で表現するにふさわしい。

9条をめぐる議論を振り返れば、初期の段階では武装解除されたわけだから、武力行使の手段はなかった。議論になったのは自衛権は放棄しているのかという点だった。

自衛隊の創設や国連加盟申請、日米安全保障条約の改定と、正面からではなくとも、時々で集団的自衛権の問題は国会で論議された。そのつど、どう検討しても9条の下では行使は認められないという結論を出してきた。

ところが「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた首相が登場し、解決済みであるはずの集団的自衛権の行使が解釈で認められるはずで、認めるべきだという意見が強くなってきた。

自衛隊は個別的自衛権の行使を担う組織として生まれた。その行使の根幹である自衛権発動の3要件の一つが「最小限度にとどまるべき」というものだ。その制約要素は定量的な区分基準として使われていた。

やがて、個別的自衛権と集団的自衛権の境目を区分する条件としても用いられるようになった。そこでの集団的自衛権は「必要最小限度」に入らないという結論は決して間違っていない。

ところが今回の報告書を読むと、個別と集団の区分をする境目の要素としての「最小限」が、安保情勢をめぐる変化を鑑み、必要最小限度のものとして集団的自衛権の行使が認められるべきであると、むしろ前向きに取り込む基準として使われようとしている。まさに牽強付会だ。

この理由付けで閣議決定がかぶせられ、9条の下でも行使が問題ないということに固まってしまえば、積み重ねてきた議論が飛んでしまう。

■安保法制懇の報告書ポイント■

一、憲法9条が認める「必要最小限度の自衛措置」の範囲に集団的自衛権の行使も含めるような解釈変更を提言。

一、現行の憲法解釈は、安全保障の状況変化を考えると適当でない。

一、安全保障上の課題としてシーレーン(海上交通路)を念頭に置いた機雷除去など新たに6事例を明示。

一、行使条件に「日本の安全に重大な影響を及ぼす」場合などを列挙。

一、国連の集団安全保障やグレーゾーン事態への対処も必要。

【神奈川新聞】


孫崎享・元外務省国際情報局長
孫崎享・元外務省国際情報局長

大森政輔・元内閣法制局長官
大森政輔・元内閣法制局長官

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