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【社説】集団的自衛権論戦 国会は存在意義見せよ

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年5月29日(木) 11:09

集団的自衛権の行使容認をめぐる議論が国会で始まった。28日の衆院予算委員会で安倍晋三首相は「切れ目のない防衛体制をつくる」と答弁し、あらためて安全保障法制整備の必要性を強調した。

首相は「行使を全面的に容認する解釈にはなり得ない」と、行使容認の場合にもあくまで限定的だとの姿勢を言明した。ただ、事例として挙げていた周辺有事の際の米艦防護に関しては、個別的自衛権では対応できないと説明し、邦人が乗っていない場合も含めた行使容認が必要だとの認識を示した。

これに先立ち、政府は現行の憲法解釈や法制度の下では対処できない事態として15事例を与党に提示している。政府はこのうちの大半で、集団的自衛権の行使を認めなければ対処できないとしている。

だが各党の実情を見ると、有権者に分かりやすい議論が尽くされるかどうかは心もとない。

自民党内では、高村正彦副総裁が提唱した「限定的容認論」に、異論はすっかり鳴りを潜めた。27日に同党が開いた安全保障法制整備推進本部の会合では、講師を務めた柳沢協二元内閣官房副長官補に対し、政府方針に批判的な姿勢への再批判が出席議員から相次ぎ、石破茂幹事長が「われわれが招いた客には敬意を」とたしなめるほどだった。

相互の信頼醸成は安全保障の柱でもある。異論に耳を傾ける謙虚な姿勢が欠けていては、この問題を論議する適格性に疑問符が付く。

東シナ海では自衛隊機に中国軍機が異常接近するなど、国際ルールを軽視するかのような中国の実力行使が続いている。安全保障環境が変化している状況下では、現行法のすき間を埋める作業は急務だろう。

ただ、議論の行方が、行使容認に慎重な姿勢を崩していない公明党と自民党の協議進展だけに焦点が結ばれていること自体、望ましい状況とは言えまい。

野党の存在感も薄い。意見の隔たりが埋まらなかったり、政府与党の方針に歩調を合わせる傾向があったりし、有権者に明確な対立軸を示す力に乏しいのが実情だ。

国民の幅広い意見を反映するためにも、争点を浮き彫りにするのは立法府の重要な役割ではないか。国会は行政府に対する存在意義を示してほしい。結論を急がず、可能な限り議論の場を設けるべきだ。

【神奈川新聞】

 
 

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