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【社説】集団的自衛権 為政者は謙虚な議論を

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年5月16日(金) 09:13

戦後とり続けてきた安全保障政策の歴史的転換点を、日本は迎えることになるのだろうか。

神奈川県内には自衛隊の主要拠点が多い。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」-。制服に袖を通した隊員たちは、そう服務宣誓する。

活動の枠が広がった場合、リスクに直面するのは、政治家ではなく、彼ら一人一人や家族、関係者らである。それを思えば謙虚さを忘れた拙速な議論などできないはずだ。

集団的自衛権の行使容認の是非をめぐり、安倍晋三首相は15日、限定的な容認に関する研究を進める考えを正式に表明した。政府の有識者会議が同日、首相に報告書を提出したことを受けたものだ。

報告書は憲法9条について、自衛のための「必要最小限度」に、集団的自衛権の行使も含まれると解釈すべきだと指摘。憲法解釈を変え、行使を認めるよう政府に求めている。

こうした手法に、憲法学の専門家からは「憲法は国家権力を縛る」との立憲主義から問題だとの批判が出ている。これに対し、有識者会議の座長代理を務める北岡伸一・国際大学長は「国民の生命を守るのは憲法の最重要の要請だ」と強調した。

報告書では国連の集団的安全保障への参加も可能としたが、首相はこの見解は取らないとした。日本と密接な関係にある国に関連した限定的な行使容認で、広く理解を得たい思惑がうかがえる。安全保障政策の実効性を維持するための法整備作業を急ぐ考えだ。

安倍首相は会見で、邦人輸送中の米国艦船の防護を挙げて「憲法が『国民を守る責任を放置せよ』と言っているとは考えられない」と訴えた。政府与党側からも「同盟国の危機に支援を差し伸べないようでは同盟国の資格はない」との声もある。

だが、想定される事例は本当に現憲法下の法体系では対応できないものばかりなのか。「平和憲法」の看板も戦後日本の国家像を改善させ、日米安保体制の機能とともにアジア太平洋の安定に貢献してきたとはいえないだろうか。

首相は、憲法と安全保障への見識を高めることを国民に呼び掛けた。それなら、為政者の特権であるかのように憲法解釈の変更を急げば、立憲主義をおろそかにしているとの批判を招くのは当然だろう。

【神奈川新聞】

 
 

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