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【社説】憲法記念日に ご都合解釈は許されぬ

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年5月3日(土) 10:31

日本国憲法が施行されてから67年を迎えた。

昨年の参院選で自民党が勝利し、「ねじれ国会」が解消した。自民党総裁である安倍晋三首相は憲法改正に前向きである。改憲発議要件の緩和のために、96条の先行改正を目指す姿勢は変わらない。

改憲ムードを高める「地ならし」となっているのが、9条をめぐる政府の解釈変更方針である。集団的自衛権の行使容認につなげ、米国との同盟強化を狙う。

憲法をめぐる論議の活性化は望ましい。そうしたムードを生かし、熟議を目指すべきだろう。

拙速は慎みたい。憲法解釈についても、政府の都合に合わせた変更は許されない。まずは国会を軸に幅広い議論を展開してほしい。

集団的自衛権とは、日本と密接な関係にある同盟国への攻撃に対し、自国が攻撃されていなくとも反撃できる権利を指す。歴代政権は「9条で許される自衛権行使は必要最小限度にとどめるべきだ」として「集団的自衛権の行使はその範囲を超えるもので、憲法上許されない」との解釈を引き継いできた。

最近の自民党は砂川事件の最高裁判決(1959年)を引き合いに、「司法は行使を容認している」と説き始めた。判決で認められた必要最小限の自衛権に、集団的自衛権も含まれるという論理展開である。

主張のよりどころは同判決に際して出された当時の最高裁長官の補足意見だ。「他衛はすなわち自衛」など、集団的自衛権容認ともとれる表現が盛り込まれている。同党と内閣は解釈変更の重要な根拠としての位置付けを模索している。

自衛隊のイラク派遣に対する名古屋高裁判決(2008年)では、違憲の判断が主文ではなく傍論に記された。時の政権党だった自民やその内閣は主文にないことのみをとらえ、判決について「暇があったら読む程度の内容」などと酷評した。

補足意見は判決よりも意義が薄い個人的見解にすぎない。解釈変更の根拠として持ち出すのは疑問である。傍論すら認めなかった過去を国民は忘れまい。一貫性を欠く対応をとるのであれば、内閣や自民党への信頼は失われるだろう。

憲法は国民の安全や権利を守り、政治の暴走を防ぐ役割を担う。その原点に立ち返り、集団的自衛権行使の是非に向き合いたい。

【神奈川新聞】

 
 

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