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国家戦略の現場 対論(下)明治大教授 市川宏雄さん 首都機能分担が鍵

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年4月25日(金) 11:37

市川宏雄さん
市川宏雄さん

国家戦略特区は東京圏を対象に「世界一ビジネスがしやすい環境の創出」を掲げる。「東京五輪開催と国家戦略特区の推進。これが頓挫(とんざ)したら日本はもう後がない」。国や自治体の都市政策に携わってきた明治大教授の市川宏雄さんは、神奈川を含めた「東京圏」を中心に据えた成長戦略の展開を評価する。では、少子高齢化、人口減少が進行する中、五輪後も持続可能な成長、都市づくりをどう見据えるのか。 (宮崎 功一)

2008年から森記念財団都市戦略研究所が公表している「世界の都市総合ランキング」づくりの座長を務める。「2013年の1位はロンドン。これはロンドン五輪の効果に他ならない。東京は4位とトップクラスにはあるが、本来のポテンシャルを踏まえれば、ロンドンや2位のニューヨークと競い合う力を持っている」と世界的なビッグイベントである五輪効果に期待を寄せる。

では、世界一のビジネス環境をどのように創出するのか。「それはすなわち東京の弱点を克服することだ」。ランキングの基となる個別指標の中で偏差値50以下の「東京の弱み」は、経済の自由度を指す市場の魅力、法規制、居住コスト、国際交通ネットワークなどだ。

「例えば起業する場合、東京なら関係省庁が複数にまたがり、許認可に1年もかかることがある。シンガポールなら窓口が一元化されていて1週間で済む」。戦略特区が掲げる規制改革が、東京のランクを上昇させる大きな要因になると分析する。

かつて「地方の時代」が提唱されていた時代、「東京一極集中」は否定的に受け止められた。

「今後、人口減少や高齢化を見据え、持続的な成長を確保するためには、東京圏への集中、強化が必然だ。資源を東京圏に集中投下することによって富を生み出し、それを地方に均衡に分配する手法が最適と考える。むしろ、今後、地方を救えるのは東京圏しかないのではないか」

■羽田空港が軸に

国家戦略特区の東京圏は25日の閣議で千葉県成田市と東京都の千代田区など9区、神奈川県全域に正式決定する。

その強み、潜在力について「国際ハブ空港があり、さらに京浜工業地帯として発展してきた経緯から産業の基盤、素地が整っている」と指摘する。特に京浜臨海部には重厚長大産業の広大な跡地があり、ライフサイエンス、バイオやITといった第3次産業の中でも最も新しい分野を展開するために適しているという。

さらに羽田空港の国際線の発着枠の拡大、ハブ機能の強化が見込まれる。「今後10年、日本経済は再国際化した羽田空港を軸に動く。世界に通じるハブ機能がなければ、アジアの他都市にはかなわない。限られた資源を最も有効かつ効率的に活用できるのは場所が東京圏であることは明らかだ」

東京都とともに首都機能を担う神奈川県、横浜市、川崎市など7都県市で「首都圏メガロポリス構想」が提起されたことがある。2001年のことだ。策定作業に関わった経験を踏まえ、「この構想に東京圏への集中の源流がある。特区とは、そもそも白地に絵を描くことではない」との認識を示す。

当時、羽田空港の再国際化はまだ決まっていなかったが、すでにヒト、モノ、カネの都内回帰が始まっていた。その後、品川エリアを含めた都心南部の開発が急速に進み、川崎臨海部では殿町地区に医療関連の研究機関、企業の誘致が本格化する。「都心と東京湾エリアを軸に国際競争力強化の拠点を形成するためには、東京五輪開催、国家戦略特区実施という条件がそろった今こそがラストチャンスだ」

■リニア波及効果

東京五輪後の景気失速を懸念する声もある。五輪効果の持続性、その後の大プロジェクトであるリニア中央新幹線開通の波及効果をどうみるのか。「五輪開催と特区実施の相乗効果が高まれば、想定以上の富が蓄積され、五輪後の景気低迷もしばらくは乗り越えられるのではないか。高齢化がピークを迎える30年以降の日本経済を見据えるならば、27年に先行開通するリニア中央新幹線が起爆剤になる」と見立てる。

具体的なリニア開通効果については「東京-名古屋都市圏、いわば巨大東京圏が生まれることになる。東京の郊外に、製造業に強い名古屋経済圏が加わることになる点が極めて重要」。東京圏から大東京圏へ「バージョンアップ」が日本経済全体に大きなインパクトを及ぼすという。

県ライフイノベーションセンター整備・運営事業者選定委員会委員長を務め、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区との関わりも深い。神奈川県は全域が特区の対象になるが、県内各地域の産業構造の特性を踏まえた機能、役割分担の必要性を強調する。

「(国家戦略特区の推進は)県とともに3政令市の動向が鍵を握るだろう。川崎の場合、羽田空港、東京都に隣接した立地を生かし、臨海部では医療特区、内陸部は良好な住宅地の形成、東京のバックアップ機能という役割が明確だ」

一方、国際展示場、会議場が立地する横浜市については、MICE(国際的な展示、会議機能など)の分野で東京都と役割分担し、国際的なMICE需要の取り込みを期待する。相模原市については、相模原駅周辺土地計画検討委員会の委員長を務めており、「在日米陸軍相模総合補給廠(しょう)の一部返還地の開発など、今後の開発余地があり夢がある都市だ」としている。

いちかわ・ひろお 明治大専門職大学院長・公共政策大学院ガバナンス研究科長。1947年、東京都生まれ。早稲田大理工学部卒、1級建築士。都市政策のほか危機管理研究も手掛け、2011年、日本危機管理士機構を創設し、危機管理士認定制度をスタートさせた。

【神奈川新聞】

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