職員による不祥事が相次いでいた小田原市で、再び不祥事が発覚した。架空の子育て世帯をシステムに登録して児童手当約1300万円を詐取していたのは、入庁して間もない若手職員。市は不正の開始から3年近くたつまでなぜ見抜けなかったのか。
「過去の不祥事を反省し、コンプライアンスの徹底をしている中での出来事。この間の私たちの取り組み、私自身の管理が不十分だったということにほかならない」
加藤憲一市長は7日、緊急記者会見を開き、苦渋の表情を浮かべながら深々と頭を下げた。
市の発表によると、児童手当の支給業務をしていた子ども青少年部子育て政策課の男性主事(30)は2011年6月から14年3月にかけ、自分の銀行口座を振込先に指定した架空の3世帯を登録。最大16人分の児童手当(子ども手当)計1360万8千円を詐取した。生活費や住宅建築費などに使ったといい、市は7日付で懲戒免職処分にした。
男性主事は10年4月に入庁して同課に配属。「コンピューターに精通し、仕事の流れをすべて熟知している」という評価だった。不正に手を染めたのは、一緒に業務に当たっていた先輩職員が11年4月に異動、主担当になった直後だった。
DV(ドメスティックバイオレンス)被害者などが対象となる住民登録外の受給者に使われた世帯番号を悪用。受給者に発送される支払通知書を抜き取っていたほか、別室でシステム操作を行うなど、不正受給が発見されないよう細工をしていた。昨年9月には、現況届の書類がないのに届け出済みとなっている世帯に気づいた同僚職員に「テスト用のダミーデータだから問題ない」と説明している。
チェック機能が不十分だったことについて、市幹部は「(男性主事は)勤務態度も非常に真面目。悪意で何かをやっているとは想定していなかった」と釈明。続発している不祥事への意識は薄かった。
同市は11年から12年にかけ、業者に入札情報を漏らして約1千万円を無利子で借りた職員、市立病院で現金を盗んだ職員を相次いで懲戒免職処分にした。13年には新採用の消防職員がセクハラ行為を繰り返して依願退職したほか、消防長(当時)が公文書の改ざんを指示したとして懲戒処分を受けるなど、不祥事が止まらない状況だ。
11年には庁内にコンプライアンス推進委員会が設けられたが、内部組織で実効性には疑問符が付いたまま。市は、新採用職員や一部職員に実施している倫理研修の対象を全職員に拡大するなど、さらなる再発防止策を検討している。
【神奈川新聞】