みんなの党の渡辺喜美代表が8億円の借り入れ問題をめぐり、党代表の辞任を表明した。
問題の発覚から10日以上も経ておりこの間、記者会見を行ったのは1度だけだ。党務にも開会中の国会審議にも出席していない。公党の党首としての役割を果たせぬまま長期の政治空白を招いた事実だけをとっても、辞任は当然である。
しかも、問題は全く解明されていない。政治資金収支報告書に記載されない多額の借り入れが「法的な問題は全くない」と、なぜ断言し続けられるのだろうか。国民に対して説明を尽くさなければ党の再建は果たせないだろう。
国会での説明の場としては、証人喚問や政治倫理審査会への出席などが考えられる。そうした機会の実現を「当事者」たるみんなの党から申し出てほしい。党による調査結果を広く公表し、国会審議の場を通して信頼回復の道を探るべきだ。
みんなの党は「しがらみなき政治の実現」を掲げてきた。特定の団体からの支援を受けない清新さをアピールし支持を拡大。他党の「政治とカネ」の問題をめぐり、渡辺氏は厳しい批判を展開してきた。
「個人的な借り入れ」との釈明が国民からは理解されないことを、渡辺氏は認識しているはずだ。自分自身が発し続けた理念に対して誠実であるべきだろう。
国会はただでさえ「1強多弱」とされる、政府・与党主導の状態が続いてきた。そうした中で渡辺氏の問題は、野党の共闘ムードを停滞させてしまった。
みんなの党と渡辺氏は国会などにおいてのさらなる説明、後任代表の選出などを急がなければならない。立て直しの遅れは党衰退を招くことにとどまらない。野党のさらなる弱体化をもたらすだろう。
今国会の焦点となっている「集団的自衛権行使の是非」は重要な政治課題だ。その方向性を判断していくためには、多様な意見をぶつけ合うことが欠かせない。だからこそ「1強」という国会構図は望ましくない。国民の野党への信頼を揺るがした今回の問題は罪深い。
渡辺氏への視線は厳しい。代表は辞任するが「一兵卒」として党員や国会議員の立場にとどまるという。説明責任を果たした上で、さらに国民の理解を得られなければ、それすらも許されまい。
【神奈川新聞】